あれから一週間が経った。


あの日以来、話はどんどんと進み、ついに今日…俺達は晴れて家族になった。


「二人共、おめでとう」

「おめでとうアル!!」

「ありがとう。神楽、総悟君」

「…さあ!家に帰ろう」

「はいアル!」


家は、俺と親父が住んでいたマンションに住むことになった。元々4人家族だったため、広さは十分ある。場所も良く、神楽の通う高校にも近いという事で決まったのだ。


そうこうしている間に、家に着いた。


「さぁ着いたよ。荷物は既に部屋に運んでいるから」

「神楽ちゃんの部屋は、入ってすぐ右の所よ」

「わかったアル!」


神楽の部屋は、以前姉が使っていた部屋だ。場所で言うと、俺の部屋の隣になる。


「あっ…。総悟、神楽ちゃん。後でリビングに来てくれないか?大事な話があるんだ」

「…大事な話って?」

「詳しくはそこで話すから…。準備が出来たら来てくれる?」

「…分かったネ。マミー」



心のどこかで嫌な空気を感じた。



──────



「海外転勤?!親父が?!」

「じゃあ!みんなで一緒に暮らせないアルカ?!」

親父達の話はこうだった…。

会社の大きなプロジェクトを任された親父が、会社の中国支部に配属された事。
それを手助けするために中国出身である神楽の母が、ついていくのを決めた事。
しかし、俺達は学校が有るため行けない事。

…と、言うものだった。


「済まない…。こればかりはどうしようもないんだ…」

「貴方たち2人は、ここに残ってもらう事になるけれど…」

「「……………」」


俺達は何も言えなかった。
重い空気か4人を包む。


「…いいアルヨ。中国に行っても」

「「えっ……!」」


神楽が口を開いた。


「別に家族がバラバラになる訳じゃないアル!それに仕事だったら仕方がないネ…。私は大丈夫ヨ!お兄さんとここで暮らすアル。だから、仕事頑張ってきてヨ!」

「…そうでさァ!俺達は大丈夫だから。安心して下せェ」


とっさに口から出てしまった言葉
だがそれは嘘ではなく本心だった


「二人共…。ありがとう。感謝するよ」

「…これで安心して中国に行けるわ。本当にありがとう。」



そうして家族4人の貴重な時間は終わりを告げていった。



───────



(じゃあ、行ってきます)
(体に、気をつけてね…)


そう言って2人は飛行機に乗っていった。

残った俺と神楽はとりあえず家に戻って来た。


「…ただいま」

「………」


沈黙した空気が流れる。


「…迷惑だったアルカ?」

「えっ……?」


神楽を見ると、その大きな青い瞳が揺れていた。


「だって、私…お兄さんの気持ちも考えないで、勝手てに話を進めてしまったアル!だから…その…迷惑なのかなって…」

「ちがいまさァ!!」

「…えっ?」


思わず大きな声を出してしまった


「あの時、あぁ言ってくれなかったら、俺は親父達に何も言えなかった。だから…迷惑だなんて思っていやせん」

「お兄さん…!!」

「それに、俺達は家族だから…敬語じゃなくていいでさァ」


すると神楽はニコッと笑った。
俺は思わず、目線をそらしてしまった。


「お兄さん!ありがとうございますアル!私、お兄さんに嫌われてるんだと思っていたネ。本当に良かったアル!」

「だから敬語は…」

「あっ!自己紹介、まだしていなかったアルナ!!」

「……おい。」


神楽は俺を見て言った。


「初めまして!お兄さんの妹になりました。神楽ネ!妹だから“神楽”でいいアル!ふつつか者…?ですが、よろしくアルヨ!!」

「…あっ。俺は総悟でさァ。よろしくな、神楽」



すると神楽は俺の手を握った。



「よろしくの握手アル!

 ……………総悟!!!」



(…トクン)



「あぁ。よろしくでさァ」





握った君の手から、優しい温もりが伝わった。






握手






あいさ
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