家族が増える。

そう聞かされたのは、約1か月前。前々から、最近の親父は何故だか機嫌が良いとは思っていたが、まさかそう言う事だったとは…。

病弱な母姉はすでに他界しており、家の中には俺と親父の2人しか住んでいない。

今年、大学に入ったばかりの俺には何もかもが初めて過ぎて、状況把握がよく出来なかったのだが、一ヶ月後、つまりは今日。新しく家族になる人たちとの顔合わせのようなものがあるため、なんとなくではあるものの、現的状況がわかってきた。

俺の親父と、相手はすでに会っているのだが(デート的ななにか)俺が、その近未来的母になる、つまりは義母に顔を合わせるのは初めてだ。

親父の話によると、義母には、高校1年になる娘がいるそうだ。だから、親父たちが結婚すれば、その娘は俺の義理の妹ということになる。なんとも複雑な気持ちだ。

正直、俺は今のままの生活が良い。

母姉が死んで、数年はたつが、彼女たち以外にも家族が欲しいなんて、そんな事一度も思わなかった。けれど、親父は違ったらしい。親父が決めた事なら、俺にはとやかく言う権利なんてないし、別に反対をするわけでも、したいわけでもない。

親父が愛した人なら、誰であろうと『母さん』と呼べる自身はある。親父には、幸せでいてほしいのだ。

「総悟、今日から新しい家族になる人だ!この方が、お前の母親になる人だぞ」

そう言われて頭を軽く下げた人。次に顔をあげた時に思ったのは、綺麗という言葉が良く似合う人、だ。母さんも、姉も、とても綺麗な人だったのだが、この人はまた違う綺麗さ。

「こんばんは、総悟君。初めてお目にかかりますね」

にっこりと、目を細めて笑う姿は、なんとなくだが、母さんに似ている気がした。

「あれ?神楽ちゃんは?」

「そうなのよ。あの子ったら、部活の試合が長くなったとかで、少し遅れてくるらしいの…。せっかくの顔合わせなのに、ごめんなさい…」

困ったように笑う姿は、姉とかぶった。親父と義母が笑いながら話しているのを、俺はただそばで聞いていた。居づらい。そう思った時だった。ドアが、ギィ―と開いて、俺たちの視線は、その音のした方へと伸びる。

「マミー。御免なさいヨ。少しだけ試合が長引いちゃったアル」

学校帰りなのか、制服のままのその格好の少女に、目が奪われた。これが、この女が、今度から俺の『妹』になる神楽。なんだか恥ずかしくなって、視線をそらす。

「あらまぁ。それなら、『ごめんなさい』は、彼らに先に言うのが筋だと思うわ。神楽ちゃん?」

「あ…。そうだったネ。遅くなってしまいましたヨ。試合が長引いちゃって…。ごめんなさいアル」

ペコリと頭を下げる彼女、神楽は、母親の容姿とは全く異なっていた。どこかの、外国人とのハーフなのだろうか。…それこそ複雑じゃないか。

「あぁ、いいんだよ!それより、こっちにすわって、一緒に食事でもしよう」

親父は、ニコニコしながら、席をすすめる。機嫌が良さそうだ。なんだか俺まで嬉しい気持ちになる。

「改めて紹介するよ。こっちが、息子の総悟だ。総悟。このお嬢さんが、今度から総悟の妹になる神楽ちゃんだ。仲良くしてくれよ?」

「お兄さんアルな。お兄さんは、大学生アルか?」

「あ、…あぁ。大学1年でさァ」

唐突に聞かれた言葉に、少しだけあせった。カッコ悪ィ。

「神楽ちゃんは、なんの部活をしているのかな?」

「特に決まってはないアル」

食事を頬一杯に頬張り、首をかしげて親父の質問に答える。あ、今気づいたけど、制服、俺の母校のじゃん。

「神楽は、運動神経だけはいいのよ?だから、助っ人として、仮入部のような事をしているの。今日はたしか……」

「バスケだったネ」

「そうそう。バスケットボール」

「へぇ。神楽ちゃんは運動神経がいいのか。それだったら、うちの総悟も、運動神経だけは良かったな!」

「運動神経だけってぇのはどういう事でィ。親父」

「父さんに似てるって意味だ!」

「嬉しくねえし」

いつのまにか、軽く言い争いになっていた。きづけば、義母と、神楽は大笑いをしている。そんな光景に、新しい家族も悪くはない。そう思った。

その日、家に帰った後は、なぜだか、青色だけが頭の中に残っていた。










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乃亜
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