ぐすんっ。
私の頬を伝う涙。
しとしと しとしと。
暗い空から降り落ちてくる雨。
傘をさしていないので、着ているチャイナ服は濡れて肌にピッタリとくっついている。
正直、気分が良いとは言えない。
「なぁに、しけてるんでィ。」
声がして、サッと後を振り向く。振り返った先に居たのは、憎たらしいアンチクショーのサド。
私と違ってしっかり傘をさしている。まぁ、傘をさしたって足元が濡れるのは仕方がない事なのだが。
「らしくねえな。傘もささないで。」
「五月蠅いアル。ガキはとっとと帰って飯を食うヨロシ。」
「テメーもガキだろィ。」
「私、今誰とも話したくないアル。」
「んな顔で言われてもねィ……。」
私は、今どんな顔をしているのだろうか。そんな、サドが私を置いていけないような情けないような顔をしているのだろうか。
そうだとしたら、悔しい。
私は一人でいたいのに、心からはそう思っていないようだ。
「ほれ、コレ、チャイナに捧げてやらァ。」
そう言って、サドは私に一粒の飴玉を差し出した。
毒が入っているかもしれない。
「毒なんて入ってねえよ。」
「ね、念のためアル…。」
「じゃ、俺もう行くから。」
「ちょっ、………。」
声が出せなかった。
私は、サドに貰った小さなピンク色の飴玉を、口の中に放り込んだ。
それはゆっくりと、口の中で溶けだした。
毒とわかっていても私は食べたの
あぁ、入ってないなんて嘘。
私はこんなにもあなたを想い始めたもの…。