二人の色
3Z
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冬休みは日数が少ないので自然と課題も少なくなって気分的には楽!とっても楽だ!

だけど勉強がちょっぴり苦手な子には、やっぱり課題は難しいわけである。もちろん私もその一人だ。

「サド、私絵苦手アル。だから手伝えコノヤロー」

さっきから呼び鈴を鳴らしているのに、一向に出てくる気配がない。強行突破でもしてやろうと身構えた瞬間頭をグンっと掴まれた。

「テメー、人ん家の前で何叫んでるんだよ。うっせ―よクソチャイナ。しかもまだ朝早いんだけど」

「私、時間に囚われたくないアル」

「何もカッコいいこと言ってねーよ。偉そうにすんな」

「あ、私絵苦手だからサドに手伝ってもらおうと思ってきたアル」

「話し変えんな」

サドは頗る寒そうにしてドアのカギを開けた。一緒に中に入る私。サドは一瞬だけチラリと私を見ると、何飲む?と一言だけ言った。なんかやけに優しいアル。

「ココア」

「だと思った」

なら聞くな!なんて思ったが、サドの淹れるココアは美味しい。なんでも亡くなったお姉さんに教えてもらったらしく、そのココアは本当に天下一品だ。私はぜったい作れないもん、市販なのに!!

「で、チャイナはどんな絵描いてんの?」

「3Zヨ!みんなを描いてるアル!」

「ふーん。まぁ描く絵はフリーって言ってたもんな」

「楽じゃネ?って思ってたけど、楽以前に私絵が描けないことに気付いたアル」

「だからってなんでまた俺のところに来たんでィ。朝早く」

こいつ、私が朝早くに来たこと根に持ってる。まるで、そうです。と言わんばかりに欠伸連発してるもん。これ見よがしに!!

「ココアが飲みたかったから!!」

「……まぁ、いいや。ほら、絵描くぞ」

「しょうがないから描かせてやるヨ!!」

「テメー…」

そう言いながらも、筆を手にとるサド。ココアを飲みながら、私はそれを見つめていた。

「チャイナ、カラーチャートある?」

「カラーチャート?」

「色が全部分かる紙の束って言えば、いくら馬鹿なチャイナでも分かるだろィ」

ニヤリと笑うサド。ムッとなる私。ここで無理に張り合えば、絵を描いてもらえなくなる可能性が高い。グッと抑えながらその、『カラーチャート』を取り出した。

「カラーチャートくらい、知ってたもん」

「嘘つけ」

やけになってココアを飲む。全部無くなっちゃった。少し後悔。またあとでサドに作ってもらおう。

黙々と作業を続けるサド。横でそれを見守る私。こうしていると、今まで気付けなかったサドを気付けた。

まず、睫毛が長いこと。私より長いかもしれない、それってなんかムカつく。

横顔が凄く綺麗なこと。本当にお姉さんに似てる。真剣に作業をするサドは本当にキレイだ。

筆を持つサドの指はスラッとしていて綺麗。でも、女の私とは違って男の指だ。ゴリみたいに、男!っていう指じゃないけど、大きいし、なんだかとっても力強い。力は私の方が上だけど!

「チャイナ、見てみて」

ちょいちょい、と左手で私を寄せるサド。私たち、ケンカ友達だよね?

「ほら、チャイナの色」

そう言ってカラーチャートと私の髪の色を比べるサド。本当だ、私の色だ。

「オレンジアルか?」

「いや、何だろコレ。えーっと、チャイニーズレッド?……やっぱりチャイナじゃん。それに、世界の伝統色だって。チャイナすげー」

朝早くに叫ぶなって言ったのはサドなのに、それを忘れて大きな声で笑ってる。サドがこんなに笑うのは、初めて見た。なんだか今日は新鮮な日だ。まだお昼にもなってないし、むしろこんなに朝早いのに。

「ムカつく!!じゃあお前の色は何なんだヨ!」

「茶色?」

「私が探すアル!」

サドが持っていたカラーチャートを横取りして、サドの色を探す。色ってすごい。色だけでこんなに楽しいんだ。

「茶色じゃないみたいアル……。うーんと、コレ?違うアルな」

「もう茶色でいいんじゃねーの?」

「気になったことは最後まで追求するのが私のモットーアル!」

「その調子で課題にも取り組めよ」

「課題は無理ヨ!」

サドの色は、茶色よりももっと薄い感じ。栗色とは違うなんだろう。

一枚一枚確認しながら紙をめくっていく。

「あ!一体化アル!」

「一体化?」

「これ!」

「江戸茶?」

私の手には、江戸茶と裏面に描かれた紙がある。

「江戸とサドって似てるアルな。日本の伝統色アル。私の方がでっかいヨ!」

「『ど』だけしか合ってねーだろィ。大きさは、否定できねえけど……」

ムスッとしてその色を見つめるサド。

「綺麗な色アル」

不と、何の気なしに言った言葉がサドを喜ばせたらしい。小さくありがとうと、私が聞こえないくらいの声でそう言った。

ちゃんと、聞こえてるよ。

「サド、ココア飲みたいアル」

「うん、俺もなんか飲みたくなった」

「甘いの苦手なのに?」

「おう。甘いのを今は飲みてーんでィ。クソチャイナのおかげで」

「私のおかげアルか。なんだか良い気分アル」

温かいこたつを抜けてサドはキッチンへと足を運ぶ。それを追いかける私。

「サド、ココアの美味しい作り方教えてヨ」

「嫌だ。俺だけの秘密でィ。だからあっちに行ってろ」

ニヤリと笑うサド。今日はいろんなサドを知れたし、二人の色も見つけたから黙っておこう。

「他の人たちの色も探すアルー!」

「あ!テメー、あたったから零れただろーが!」

「しーらない」

「テメっ!」

少しだけだけど、近くなれたよネ?






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チャイニーズレッド

江戸茶


二つとも本当に二人の色でびっくりしました。れいたさん、素敵なリクエストありがとうございます!しかしなんだかこの話し、色の話よりココアの話に持って行かれた気がするのは私だけだろうか…。
描きなおし要望、いつでも受け付けます(>_<)
リクエストありがとうございました!

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