「新八…。具合、悪いアル。」



そう言って、神楽ちゃんが入院したのは先月の事。
次の日くらいから高熱がでて、目を覚まさないんだ。
お医者様からは、最悪もう目を覚まさないか、覚めても記憶が残らない。

それを聞いた時、僕は堕落した。
銀さんは、静かに僕の頭を撫でてくれた。

神楽ちゃんの事は、山崎さんを通して、真選組にも伝えられた。
近藤さんを始めとする土方さんやら、たくさんの人達が来てくれた。
けれど、ただ一人だけ。

一人だけ来てない人がいた。

僕は、その人がいるであろう場所を片っ端から探して、ついに見つけた。



「沖田さん。」
「あれ、あんたは。」
「神楽ちゃんのところに行って下さい。」
「俺は、………俺が行ったって、チャイナは喜こばねえだろィ。」
「でも…。」
「いいから。俺はここにいまさァ。」



何を言っても駄目だ。
そう思った僕は、沖田さんを残して、神楽ちゃんがいる病院へ足を運んだ。



「よぉ、パッツァン。どうだった?」
「駄目でした。沖田さん、来ませんよ。」



そんな話しをしていると、一人の看護婦さんが、こちらに寄って来た。



「あの、沖田さんって、真選組の方ですよね。」



内田と書かれたネームプレートをした看護婦さん。
僕たちは、一瞬顔を見合わせて一緒に頷いた。



「沖田さん、毎日面会時間ギリギリに来てますよ。神楽ちゃんの病室に…。」
『え?』



沖田さんが毎日来てる?
面会時間ギリギリって事は、夜遅くに来ていると言う事。
まさか、そう思ったのだが、深く考えなかった。



「沖田さん、毎日同じ事するんですよ。眠っている神楽ちゃんの手をギュッと握って、早く帰って来いって。」




“神楽ちゃんが、とても大切なんでしょうね”




神楽ちゃんのバカヤロー。早く戻って来てよ。
こんなにも皆が神楽ちゃんが意識を取り戻すことを願ってるんだよ。

僕は、銀さんと二人で神楽ちゃんの両手をギュッと握った。

沖田さんは、どんな気持ちで神楽ちゃんの手を握ったんだろう。
僕らの思いとは違った『想い』なのかな。






儚く淡い想いの先には泡しかないの?



握った手から、暖かさが染みてきた。








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