ツンデレ彼女
告白を決意する沖田
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最近気になることがある。見回りをしても何をしても、なぜか最近やたらと目にとまる。小さいくせに体に対して大きな重い傘をクルクル回してる、可愛い…じゃなかった。クソチャイナ。
「んだよクソサド。さっきからガン飛ばしてんじゃねーヨ!」
俺がチャイナと話すときはいつもこうだ。睨みあって殴り合って。傷だらけでお互いのあるべき場所へ帰る。
本当はそれだけでも楽しいし満足だったけれど、ある日を境に俺はこんなチンチクリンなチャイナに奮闘することとなる。
数日後のことである。
「神楽ちゃん、今月のクリスマス空いてる?」
「クリスマス?」
偶然見回り中に見かけたチャイナと、知らない男。どうやらチャイナはその男と顔見知りらしい。
「そう、クリスマス。もし神楽ちゃんが大丈夫なら一緒に遊園地に行きたいなーと思って」
ニヤニヤとした面で下心がバレバレだ。そして、もやもやとした表情でその様子を見つめている俺も下心がバレバレだ。それにこんなところ、絶対に屯所のやつらには見られたくない。
この俺様が、女ごときでこんなにアタフタしているとバレたら、もう最悪だ。
「私、遊園地は好きな人一緒に行きたいアル」
突然の曝露。チャイナ、好きな人いたのか?知らなかった。チャイナの好きな人……。
それじゃあ。といってチャイナはその男から離れた。あわててチャイナの後をつける俺。ストーカーじゃねえから。危ない男からチャイナを守るためなんでィ。
「あ、神楽ちゃん」
また男!!
チャイナの周りには案外いろんな男がいた。旦那や眼鏡は論外だ。土方と近藤さんも論外。旦那と眼鏡はチャイナの一番近くに居るが、家族みたいなものだと思う。実際チャイナがそう言っていた。という事は、チャイナと近い恋愛対象の男は俺。
しかしこの現状で、チャイナには結構多い男関係があると分かった。それを見て俺が動けないのはヘタレなんかではない。断じてない。
た、タイミングを見計らってるだけでィ。
「神楽ちゃん今度の土曜日暇かな?」
「今度の土曜日はお仕事が入ってるアル!」
「そっか、残念だな…」
おおきく手を振ってチャイナは離れた。ざまーみろ、お前みたいなダサい男がチャイナと釣り合うわけない。チャイナと釣り合うのは、力も顔もいい俺だけなんでィ。
声にならない思いを胸の中で言ったって、チャイナは気づくわけがない。それに俺は話しかける勇気もない。今までチャイナに話しかけてきた男は俺より上だということだ。
でも、チャイナを好きな気持ちは絶対に負けたくない。
そうこうしているうちに、チャイナを見失ってしまった。俺の世界は近藤さん中心に回っているはずだったのに、いつの間にかチャイナ中心の生活になってしまっていたのだ。本当に、いつの間にか。
「神楽ちゃん」
またか!
とてとてと走ってきたのは小さな男の子だった。でも俺にとっては男はみんな狼、ライバルなんだ。絶対負けない。
「神楽ちゃん、今年のクリスマスは僕のお家で一緒にご飯食べない?母上も良いって言ってるよ」
にこりと頬を染めて言う男の子は、チャイナにとっては可愛いのだろう。けれど、これじゃあ俺がクリスマスまでに練りに練って仕上げた計画がパァになってしまう。
ずっと前からチャイナの事が好きで、どうにかしてクリスマスは一緒にすごそうとか、あわよくば寒い一冬の夜を越そうとか、べ、べつに思っちゃいねえけど!!
「ごめんなさヨ、私その日はどうしても外せない闇打ちがあるネ。今度また一緒に遊ぼうヨ」
「闇打ち?わかった!じゃあ神楽ちゃん、また遊ぼうね!絶対だよ!」
「ばいばい!」
てとてとと走る男の子の姿を、チャイナは笑顔で見送った。そして、振り返ると歩き始める。…振り返る?
「さっきからストーカー紛いなことしてんじゃねーヨ!」
目を逆三角形にしたチャイナがプンスカ怒りながらこっちへ来た。怒ってる顔も可愛い…。俺はもう、チャイナにメロメロなんでィ。恋する乙男なんだ。
「チャイナを不埒な男どもから守ろうと見守ってただけでィ。邪魔すんな」
「不埒なのはお前アル!ていうかキモい!キャラ変わってるヨ!」
「俺、今日から脱・ヘタレなんでさァ。好きな女にはがっつり行くことにしたんだよ」
「ならその女のところに行くヨロシ!」
帰ろうとするチャイナの細い腕を掴む。あんなに食ってて、馬鹿力なのにどうしてこんなに華奢なんだろう。しかも酢昆布ばっかり食ってるはずなのに、甘い匂いしかしない。
いつもケンカして睨みあって傷だらけになって、チャイナが好きだなんだと言ってるけど、チャイナはやっぱり女なんだ。好きな女を傷だらけにする男なんて、カッコ悪い。男は女を守ってやらなきゃいけないんだ。
「なに機嫌悪くなってるアルか」
「気付かないお前が悪いんでィ」
「はぁ?」
眉を『ハ』の字に寄せて下から俺を見るチャイナ。そんな顔も素敵だぜィ。
「俺は男だ。だから腹括ってやるんだよ、気付け馬鹿チャイナ」
握っている手に力が入る。
「ちょ、離せヨ!お前可笑しいアル、変ヨ!」
「黙って聞けよ!」
ひゅっと、息をつまらせるチャイナ。
「最近やたら男に誘われてて」
「今に始まったことじゃないアル」
「だから黙って聞けよ。……見回りの時に毎回それを見せられて、イライラしてた。チャイナが他の男のものになるのが、嫌だった」
「だから、それがどうしたアルか!?」
「鈍感!!クソチャイナ!此処まで言ったら普通気付くだろィ!」
「さっきから馬鹿だのクソだの!気付かないから聞いてるんだヨ!!」
「だから、俺はお前のことが好きだって事だよ!!……あ」
勢いに任せて、本当はかっこよく告白するはずだったのにこんなのあんまりだ。急に恥ずかしくなった。顔が真っ赤になっているのが分かるくらい熱が顔に集中した。それはチャイナも同じだったようで、素早くうつむく。
「ば、馬鹿ダロ。やっぱり馬鹿だったアル。そんな恥ずかしいこと、言うなヨ」
「口が滑ったんでィ。畜生……」
今なら今まで言えなかった恥ずかしい事でも言えるかもしれない。今日の俺は、脱・ヘタレなんだから。
「これなら分かっただろィ。チャイナが好きなんでィ。俺と、クリスマス一緒に過ごしやがれ」
「う、上から目線な奴とは過ごしてやらないネ!バーカ!!」
一瞬の隙を突かれて、チャイナが逃げた。逃げやがったあのクソチャイナ!
「逃げんな!」
「クリスマス!!!」
先ほどよりもずっと遠くにに見えるチャイナが、大声出して叫んだ。
「大江戸遊園地のチケットと、マフラーと手袋もってこないと絶対に行ってやらないアル!じゃあナー!」
やられた。チャイナはツンデレだったんだった。
「アレを他の男の前でやらせねえように、これからしっかり躾けないといけねえや」
とにかく、来るべき日のためにしっかりと用意をしなくてはいけない。
ツンデレ彼女のために!
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男に言い寄られている神楽をみて沖田が告白を決意する。というリクエストだったのですが、告白を決意する前に勢いに任せて告白してます沖田君。脱・ヘタレ☆のはずだったのにどうしたんだろう。
書きなおしをしてほしいなどあれば、ご報告ください!
ありがとうございました!