ふわりと香る

現代・塾

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「寝坊したアル!もう塾始まってるヨ!!」

塾に通い始めて1年経つ。塾通いには慣れたし、学校帰りの塾は何の問題もなかった。ただ一つ、慣れないというか出来なことと言えば朝早くに起きることだ。

「最悪アル。また課題増やされるネ」

毎回毎回あんたは勉強する気があるのか?と、別にそこまで怒られはしないが代わりに課題を増やされる。だったら怒られた方がましだ!

急いで教室に入ると、すでに休み時間だった。

「…まぁいっか。私の机どこアルか?」

「ん?あ、チャイナ遅っせーの」

「うるさいクソサド!お前には関係ないアル」

「はいはい。お前の席は俺の隣」

「サドの隣なんて久しぶりアルな」

「……そ、そうだな」

私の塾は、先生が生徒の名前が入ったファイルを適当に机の上に並べるため、誰が誰が誰の隣になるか分からない。サドと隣の席になったのは数週間ぶりだった。

なぜか焦るサドに、変な視線を送ったが、その視線に気づいたサドから『死ねチャイナ』と言われ、普通の、いつものサドだと感じた。私の思い違いだったのだろうか?

そして、なんだかんだで授業をすべて終えた私に待っていたのは大量の課題だった。

「いやアル。したくないアル」

「チャイナ可哀そう。ブフッ」

いま笑った!笑ったアル!こいつもう絶対殺す!明日中に地獄へ送ってやる!

「はーっ。そんなチャイナに神の救いの手を差し伸べてやらァ」

「救いの手?」

そう言うとサドは、自身の机の椅子を私の机の近くへ持ってくる。な、なんだか異常なまでに近い。

「ほれ、ここはこうやって解くんだよ」

「え」

「なんでィ」

「お前が教えてくれるのは珍しいと思って…」

「だから神からの救いの手なんだよ」

「ありがとうアル」

「…おう」

変な空気に少し恥ずかしさを覚えた。気まずい雰囲気に慣れていないため、必死にシャープペンを動かす。

「そうそう。ここは代入して、@に持ってくればいいんでィ」

そんなやり取りを続けていくと、サドが何かに気づいたように、スンと鼻を吸った。

「良い匂いがする」

「何がヨ」

「んー…」

そう言うとサドは私の首の後ろに掛る髪に顔をうずめた。……な、何故!!

「サド!!」

ハッと気づいたように、サドは肩をピクリと震わせ、慌てて私から離れる。

「あ、そのアレだよアレ。お前良い匂いさせすぎなんでィ!」

「な、な、な…。私のせいかヨ!!」

私の言葉など無視し、何事もなかったかのように次の問題に進もうとするサド。でも耳が赤い。恥ずかしい!

「………お前ムカつく」

「なんでそうなるアルか!」

「俺、調子狂う」

「私もアル!」

「でも、良い……と、思うぜィ」

なんだか訳が分からなくなってきた。サドの事で頭がいっぱいだ。それに、キュンってした!サド相手に!

「私も嫌じゃなかったヨ」

久しぶりに目が合った瞬間だった。




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夢で見たお話を元に作りました。
中学時代めちゃくちゃ嫌いだった人の話です(笑)


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