好きの終わり 神楽…18、土方…36、銀時…36 沖田まだでません 大きな掌が好き。ヤニ臭いって銀ちゃんは言うけど、私はそうは思わなかったんだよ。 土方さんはどこか銀ちゃんに似ている。私の親戚のおじさん。銀ちゃんも30歳を過ぎている、たしか土方さんと同い年だったはず。 「神楽、今日は飯どうする?」 やる気がないような声色で私に話しかける銀ちゃん。銀ちゃんは土方さんが嫌い。どうしてかは教えてくれなかった。あの時は、銀ちゃんの意地悪って思ってたけど、今は何となくわかる気がした。 どうしようもなく心の中にどす黒いモノが涌き出るような、そんな感覚だった。それに気付いたのはつい最近。 沖田総悟という人間は、いつの間にか私の中から色をなくしていくようだった。あんなに好きだった彼を、私は平気で忘れられるんだと思うと私は薄情な人間なのかもしれない。いいや、もしかしたら、人間じゃないのかもしれない。 代わりに土方さんがとてもとても大切な人になった。四六時中、土方さんのことを考えるようになった。以前交換したメールアドレス。携帯の液晶の上からゆっくりと撫でてみる。 私は、また恋をしてしまったようだ。 きっと、人間に恋は必要不可欠何だと思う。だからこうして次々と好きな人を作っていけるし、次々と人を忘れられる。そう考えると、私は薄情なんかじゃなくて、もともと人間という生き物が薄情なんだと思えた。 お茶碗の中にはピカピカに光るお米が入っている。でもなんでだろう。ご飯がのどに通っていかない。たすけて、銀ちゃん。 苦しいよ。 「神楽?」 「銀ちゃん、辛いアル」 こういう時、彼ならどうしてくれるだろう。新しくできた彼女には優しいのだろうか。あと少しで忘れられそうなのに、本当に嫌な人だよね。 銀ちゃんは優しく私の頭を撫でてくれた。自然と頬に涙が伝う。こんなの、私じゃないよ。そうでしょ、銀ちゃん。 「俺は上手く言えねえけどよ、お前の好きなようにして良いんじゃねーの?沖田君が好き、癖だけど土方のことも好き。沖田はともかく、土方は受け止めてくれるはずじゃねーのか?それは神楽が一番わかってるはずだと思うけど?」 「うん、わかってるよ。ちゃんとわかってるアル。でも、でもね、銀ちゃん」 「うん」 「沖田の声がね、匂いがね、あと少しなのに消えてくれないアル。沖田に新しい彼女ができたって聞いて、苦しくなった。でも、土方さんが遠くにいる誰かを見てるのもすごく…辛いアル」 「まだまだ時間はあるさ、分かんねえなら悩めばいい。大体、お前はそんな器用な奴じゃねーだろ?時間かけて、ゆっくり決めればいいんだよ」 撫でてくれる手は土方さんにすごく似ていた。暖かくて、纏わりつきたくなるようなそんな感覚。 「あーあ、神楽はどうしておじさんを好きになるのかねえ」 いつの間にか涙は消えていて、ケラケラ笑う銀ちゃんは、やっぱり土方さんと似ていた。 - - - - - - - - - - 沖田か土方かで揺れる神楽ちゃん。 お父さん的ポジションで神楽を支える銀ちゃん。 次は男同士の話です。 |