戦場に居る沖田と、その地の爺の話。
沖→神(神楽出ません)















「彼女は知っているのかぃ」

爺はそう言って煙草をふかせた。もう後数秒で灰が落ちそうなほどになったそれをまだ落とさない。その様子を見ながら俺は小さくつぶやく。

「言わなきゃなんねえのは分かってるんですがね」

「そうかぃ」

爺も小さくつぶやくとやっと煙草の灰を落とした。冷たい日陰になっているコンクリートの上に薄黒い灰がポトリと落ちる。空は真っ青なはずだ。ここがうす暗くなかったら、それはしっかりと俺の瞳にも映されただろう。

「お前さんは、弱い人間だねえ」

弱いのはお前ですよ、爺。しわくちゃな手を膝に乗せて今にもすっ転びそうな足をして。

「お前さんの考えが手に取るように分かるよ」

それじゃあ当ててみてくだせえよ。今の俺の考えを。俺だってわからない、風化寸前の意思を。

「彼女が大事だからだろう。だからお前さんは言わなかった。お前さんは、弱い人間だよ」

「分かってるつもりだったんですがねえ。でも俺が弱かったら、その彼女はもっと弱いでしょうよ、力は彼女の方が強いけれど」

「いいや、分かってないねお前さん。女は強いよ、力は人それぞれだが芯がある。強い人だとわしは思うがね」

「そりゃあんたの女房が強かっただけでさァ。女がみんなそんなこたァねえと俺は思ってるんですがね」

二本目の煙草が爺の懐から取り出された。今頃彼女はなにをしているのだろうか。こんな腐れた場所に居る俺のことを思ってくれえ居るのだろうか。

「都合のいいように解釈しちゃあ、もし帰った時に困るんでィ」

言い終わった後に、『しまった』と思った。隣に座る爺はニヤリとすると重そうに腰を上げた。

「ほら言っただろう。お前さんは弱いって。爺の話はしっかり聞くものだ」

煙草を吹かしながら日向へ消えていった爺の曲がった背中が、妙に逞しく見えた。俺は、逃げていたのか?

空は青いはずだ。俺もそっち側に行けば真っ青な空を拝めるのだろうか。

不意に彼女の顔がよぎった。こちらへ来る前に無理やり彼女を自分のものにしたが、結局は彼女は愚か自身まで傷つける形になった。好きだったのだ、彼女を。愛してしまったのだ、あの犬猿の仲であった彼女を。

「もし俺が帰ったら……、」

いいや……、続きを言うのは止めにしよう。彼女に言うのだ、この言葉の続きを。順番は逆になってしまったが、言って無駄になることは何もない。

初めて爺に感謝した。






途方行方。


――――――
意味分かんないですよね、自分でも意味分かんないです。
神楽ちゃん子どもお腹の中にいますよ、たぶん。
沖田が無理やり〜って、あれ。ああいう意味です。
そっち系の表現がないから、大丈夫ですよね??
続きは皆さんの都合のいいようにしてやってください。
とにかく、雰囲気つくりの練習でした!
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