三年前。
俺達は高校を卒業した。高校に対しては、何の悔いもなかったが、一つだけ。たった一つだけ心残りがあった。
三年前のあの日。俺は一世一代の告白をするつもりだった。しかし、相手の女は、卒業式には来なかった。
卒業式が終わって初めて気付いた。
『あいつ、留学生だったな。』
それから三年間。
俺は、女さえつくったものの、身体を合わせるどころか、キスさえ出来ないでいる。
どうしてかって?
答は簡単。
まだ、あの留学生が好きだから。三年間ずっと、その留学生の事しか考えてなかったから。
マヲションのポストを開いて中を見る。茶色い封筒が一通。
表を見ると、『同窓会のお知らせ』と、書いてあった。それを見て不と頭に思い浮かんだのはアイツ。
「来るかねィ……アイツ。」
俺は封筒を大事にしまった。
*****
「あ、沖田さん!久しぶりですね!」
「あぁ……。えっとどちら様ですかねィ?俺ァ、駄メガネなんて知り合いにはいねぇや。」
「沖田さん、完全に僕の事覚えてますよね。確実に駄メガネで覚えてますよね。」
「つべこべ言わずにさっさと中に入れろィ。」
「はいはい。じゃあ、ここの名簿に丸つけて下さい。」
「へーへー。」
俺は言われた通に名簿に丸をつけた。その時、ある名前が目に止まった。
『神楽』
アイツは、今日、この同窓会に来るのだろうか。もし来なかったら俺はここへ来たのがむだ足だ。
それから、俺は会場内でアイツが来るのをずっと待っていた。しかし、アイツは同窓会の会場には、現れなかった。
どうやら、本当にむだ足だったようだ。
「神楽……。」
初めて呼ぶ、チャイナの名前。俺は何度か一人でその名前をつぶやき続けた。
何人かが、ぞろぞろと帰って行く。それを横目に俺は一人真っ暗な夜空を眺めていた。
*******
同窓会があってから二週間が経った。
今日は、外も晴れているので、外出をした。二年前に買った車に乗って、俺は街をぶらぶら(一般的にドライブ)していた。
「もうこんな時間か?」
時計を見ると、すでに12時を回っていた。少なくとも、俺は2時間はこうしてドライブしている事になる。
何て暇人なんだと思いながら、少し腹が減ったので、近くにあったファミレスに寄った。
中に入ると、家族連れの客が多く、少しだけ気まずかったがカウンターがあったので、そこに座った。
その時声がした。それは、聞き間違えるはずのない声だった。
「サド?」
あぁ、神様。ここでもう一度俺にチャンスを下さるのですか?あの日あの時言えなかった事を言っても良いのですか?
俺は、振り返って高いソプラノをした女を見た。
顔は、酷く歪んでいただろう。女の方も、最初こそ驚いていたものの、話していくうちに綻んだ笑みを浮かべていた。
どうして彼女が、ここに居るのかは不明だけれど、今、俺だけにその瞳が向けられていると考えると何だか嬉しくって泣きそうになった。
この恋が実るまで後10秒……。
君と出逢えて僕は
(泣きそうになった)