沖(→→←){神+銀、高、兄、桂(兄弟)}
















「遅刻アル!!」

「おー神楽、今起きたのかよ。遅いんじゃない?銀さんもうすぐ学校だよー?」

「銀ちゃんは大学生、私は高校生!それに、銀ちゃんはバイクがあるから良いけど、私は歩きネ!」

朝から威勢の良い声が家中に響く。いつもならこの時間は既に家を出て、学校にいる時間なのだが、何を間違ってか目ざまし時計の設定を11時にしていたのだ。もうすぐ三校時目が始まる頃だろう。

「そーそー。旦那、俺も神楽待ってたら遅刻しちまったんでさァ。もう休みやす」

「どうしてお前が居るアルか!」

「心外だねィ、彼氏に向かって」

「そーそー。神楽も総一郎君にはお世話になってるんだから、今日一日くらいお休みしたってだいじょーぶだいじょーぶ」

「旦那、総悟です」

銀ちゃんは私のお兄ちゃんだ。そしてこの、沖田総悟は私の。……その、初めての彼氏。他の兄ちゃん達には内緒だけどね。

他の兄ちゃんというのは、小太郎兄ちゃん。晋介兄ちゃん。あと、晋介兄ちゃんの双子の兄の神威だ。なぜ神威だけが呼び捨てかというと、昔神威に公園の池に落とされたのがトラウマになったからだ。あの恨みは一生忘れない。

もう学校は諦めて、総悟が座っているソファーの隣に腰かけた。さり気なく腰に手を回す総悟。自分で言うのも少し恥ずかしいが、総悟は私をかなり好きだ。この前だって、私が委員会で隣の席になった多クラスの男子を睨み殺そうとしていた。ちなみに、総悟は私と同じクラスだ。

「あーもう。銀さんそう言うの苦手なの。分かる?いちゃつくならベットの中でお願いしますぅー」

べ、ベットだと!まだ、ちゅーしかしたこと無いのに、その先にあるでぃーぷな方もまだなのに、ベットなんて恥ずかしい単語やめてほしい。銀ちゃんのバカ!

「旦那、自分がモテないからって俺たちに当たるのは止めて下せェ」

ニヤリと笑う総悟には反して、銀ちゃんは酷く頬を引き攣らせた。前に聞いたのだが、総悟の知り合いと銀ちゃんが同級らしい。だからこんなにフレンドリーなんだ。と、最近になって理解した。まぁ、総悟なら誰とでもフレンドリーだとは思うけど。

「何言ってるアルか。銀ちゃん、目は死んじゃってるけど、いざとなったらごっさ煌めくアル。ぱっちりアルよ!」

「旦那の事、良く知ってるんだねィ」

「だって銀ちゃんは私のお兄ちゃんヨ。もう何年も一緒にいるアル。総悟なんてめじゃないヨ」

「かぐらちゃーん!それ言っちゃダメ!!めっ!総一郎君の前ではソレNG!!」

「旦那ァ、喜んで下せェ。ぶっちぎり一位でさァ」

何処から出したのか分らないが、総悟はバズーカを担いで銀ちゃんに発射した。ぶっ飛んだ銀ちゃんは多分公園の池の中にでも落っこちているのだろう。そしてその後、銀ちゃんを助けた人が、銀ちゃんに惚れてストーカーするようになったのはまた別の話。たしか、名前はさっちゃん。

「ふぁぁあ。何今の音。俺の安眠妨害したよね。あれー?神楽じゃん、まだいたの?学校もう始まってるんじゃ……」

降りてきたのは神威だった。『まずい。』そう思った時には時すでに遅し。私は、総悟の存在を銀ちゃんにしか教えていない。神威は何かと私の邪魔をするから、総悟の存在がバレると後々が面倒になる。だから教えなかったのに…。

笑顔でこちらを見る兄を、これほど恐ろしいと思った事はあっただろうか。もう、公園の恨みなんか忘れていた。忘れないってちかったのに。

「で、そいつ誰?」

「神楽さんの『彼氏』をやらせていただいてます。沖田総悟でさァ。よろしくお願います。義兄さん」

こいつ、神威に負けず劣らずの爽やか好青年演じやがって。あ、でも総悟の方がまだマシだ。総悟は、悲しかった時すぐに顔に出るし、嬉しい時は耳を赤くするから。神威は、いつも怖いくらいに笑ってるから何にも分らない。神威を知ってる人の中では『スマイルキラー』なんて呼ばれてたりもする。

「義兄さん?へぇー。君、神楽の彼氏なんだ。本当に良いの?こんな胃拡張娘なんか貰っても」

「そこも含めて好きなんで」

笑いながら喧嘩をする二人なんて初めて見た。いつもは、笑いながらヤクザをも殴り飛ばす神威を見てきたが、神威の他にもこんな事が出来るなんて。私も練習してみよう。だって、スマイルキラーって何かカッケーアル!

「おいおい。何やってんだ神威。朝っぱらからうっせーよ」

会話に割り込んできたのは、神威の双子の弟晋介兄ちゃん。晋介兄ちゃんも喧嘩強くて良く学校から神威と一緒に謹慎を食らったりしてる。二人は不良兄弟なんだって、小太郎兄ちゃんが言ってた。

そう言えば、どうしてこの双子は家にいるんだろう。

「神楽じゃねーか。学校休んだのか?」

神威と総悟が喧嘩をしている横で、晋介兄ちゃんが私の頭をポンポンと軽く叩きながら言った。

「遅刻して、起きたら11時だったアル。それで下に降りたら…」

「沖田の野郎も居たってわけか」

「そうアル。晋介兄ちゃん、どうして居るアルか?学校は?」

「神威と謹慎」

「また喧嘩?」

小さな頃に喧嘩をして、失った左目をさすりながら晋介兄ちゃんは答えた。

「いいや、今回は喧嘩してねーんだが……。校長の触角を神威と盗み取ったら謹慎食らった」

「今度はどのくらい?」

「3日間。ただし神威は5日間。アイツ校長の銅像までぶっ壊しやがったからなァ。ククク」

不気味な笑いは相変わらずご健在だった。

「あれ、晋介起きたの?ねえ聞いてくれる?神楽の彼氏だって。知ってた?」

「あぁ、結構有名だぜ?知らないのお前くらい」

「え!そんなに有名アルか!!?」

「は、神楽知らなかったのかィ。付き合い始めたその日に俺が校内の掲示板全てにプリント張り付けたんでさァ。……あの後高杉に殴られたけど」

ぼそりと呟かれた総悟の声は、最後に起きてきた兄ちゃんの声にかき消された。

「朝から喧嘩とは、貴様も落ちたな神威!!」

「五月蠅いなー。アンタの方が落ちてるよ。ていうか落ちれば?そのヅラ

「ヅラーァ、今起きたのかァ?…ヅラがずれてるぜ」

「ヅラじゃない、桂だ。じゃない小太郎おにいちゃまだ。晋介。貴様も人の事を言える立場ではなかろう。俺は知っているのだからな、貴様がさっき起きたことに!フハハハハハ!!」

「威張って言えることじゃねーだろィ」

「あれ、まだいたんだ。さっさと帰っちゃえばいいのにさぁー」

「このクソ神威。ていうか、お前の神楽に対する執着心はもはやシスコンだろィ。キモーい、シスコンキモーい!」

「それ、総悟が言える事じゃないアル」

「リーダー!何故まだウチにいる。学校はどうしたんだ」

「遅刻アル。今行っても確実に説教されて終わりだから、総悟と一緒に休むことにしたネ」

「うむ。なるほど。晋介と神威は謹慎。俺は午後から…。銀時はどうした?」

その言葉に、晋介兄ちゃん、神威は一斉に私を見た。なんだろう、これ。すごく緊張。

「……吹っ飛んだアル。総悟のバズーカで」

「余りにも五月蠅かったもんで、ふっ飛ばしちまいやした」

ニコリと笑う表情は悪魔だ。私、どうしてこんな奴と付き合ってるんだろう。きっと、小太郎兄ちゃんや晋介兄ちゃんが許さないだろう。……なんて思ってたのが間違いだった。そう言えば、最近晋介兄ちゃんと小太郎兄ちゃんは私を巡って、良く銀ちゃんを虐めていた。

「沖田、テメーもたまには役に立つんだな」

「見直したぞ、沖田総悟」

「へー。まぁ、邪魔なやつが一人減って助かったかナ?」

相変わらず笑い続ける神威。ニヤリと笑う晋介兄ちゃん。一人うんうんと頷く小太郎兄ちゃん。

「まあ、彼氏って言う敵が、ここに居るんですどねィ。今のところ俺が一番でさァ。神楽は絶対誰にも譲らないんで。神楽にとってこの俺が最初で最後の彼氏兼、最初で最後の旦那にしてやらァ」

「ねえ晋介、ヅラ。一つ提案していいかな」

「あぁ。お前が言いたい事は分ってる」

「リーダーは俺たちのリーダーだ」

さっきからリーダーってなんだヨ。なんて思ってたら、総悟に腕を急に引っ張られた。手、繋いだだけでもドキドキする。心臓が破けちゃいそう。

玄関をくぐって、追手から逃げる私たちはまるで駆け落ちしてる恋人みたいだ。

「駆け落ちしてるみてぇ!」

「私も一緒のこと思ったアル!」

まだお昼にもならない時間。私たちは、銀ちゃんが迎えに来るまでずっと逃げ回っていた。

これも、一種の幸せなのかな?






Mr.ブラザーズ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -