沖→←神/学パロ/めりくり

















「あ、真っ暗アル」

呟かれた声に、机に突っ伏していた身体をそろりとを起こす。本当だ、真っ暗だ。空も教室も、全部真っ暗だ。

「起きたアルか?」

「…チャイナの声で」

ふーん。なんて、二人きりの教室なのにムードもヘッタくれもない。あ、ムードどころか、外真っ暗だったっけ。

「帰るかィ?…その、一緒に?」

「どうして疑問形なのヨ」

フフッと笑うチャイナ。こんな顔で笑える事を知ってるのは俺だけ。そう、俺だけ。

「しょうがないから一緒に帰ってやるヨ」

「可愛くねーの。しょうがないから、荷物持ってやるよ」

「素直じゃねーの。神楽様の荷物を持たせて下さい。くらい言ってほしいアル」

ムッと唇を尖らせるチャイナに、『阿呆』と一発頭に軽く拳を落とした。

「痛いアル!」

「はいはい。『神楽様の荷物を持たせて下さい。』」

「棒読みアル。……雪、ふらないかなー」

空を眺めるチャイナ。ちなみに俺達、付き合ってねーから。別に、一緒に帰りたかったから意図的に教室に残ってたとかそう言う事はない。断じてない。

「降るわけねーだろィ。ていうか、お前と一緒にいて雪降るとか、そんなホワイトクリスマスみたいな事……」

ありえねー。そう言おうとしたら、チャイナが鞄を俺目掛けて投げつけてきた。なにしやがんだ、コノヤロー。

「沖田は乙女心が分らないヤツアルな」

「分かりたくもねーな、んな感情」

「お前がモテる経緯を説明していただきたいデスネ」

「説明不要。俺がカッコいいからに決まってんだろィ。昨日だってクリスマスに一緒に過ごして下さいってメールを何通受信した事か…」

「そのメールを間違って新八やジミーに送ってあげたいアル」

「だいたい俺は、今年のクリスマスは本命と過ごすと…あ」

「本命なんていたアルカ…?」

滑った。口が滑った。

「……あ、あぁ」

微妙な空気に、視線が泳ぐ。

「…じゃあ、その本命の子と一緒にいた方が良いんじゃないアルか。私なんかと一緒にいたら、誤解されちゃうかも……ヨ?」

チャイナの乾いた声が、虚しく、冷たい空に響いた。違う。誤解してるのはテメーだ。

「うん。誤解してると思う。ていうか、誤解してる」

「だったら…」

「だって、誤解してるのチャイナだから」

「へ?どう言う意味アルか?」

これだから、鈍感って困る。俺が、本当はどんな気持ちでチャイナを待っていたかとか、どんな気持ちで今チャイナと居るかとか。

分ってねーんだろーなァ。

「本当は…、」

これからチャイナに言う事も、

「ずっと…」

今俺がどんなスピードで心臓が波打っているかとかも。

「チャイナが…」

「好きアル!!」


・・・・・あれ。

「好きアル好きアル好きアルぅ!!」

「ちょ、待て待て待て。今、スキって言った?それともキスって言った?」

「ば、バカ!!好きって言ったネ!」

「ていうか、俺が言おうとした言葉を…、それにそう言うのって男の役目…っていうか」

「そう言うので、お前に負けたくないって思ったアル」

「テメー…どこまで男前なんでィ」

チャイナは俺より男だった。

というより、男前。

「好きでさァ」

「知ってたアル」

「マジ?」

「大マジネ」

真っ白な結晶がちらちらと降った。

「雪アル」

「雪でさァ」

きっと、幸せってこういうコト。






彼女
    
ゆき物語



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