性行為の知識がある方全般
沖田狂気気味
神楽男タラシ
沖→(←)神(←オリ)
『シリアス→微々甘』
「好き」
屋上に呼び出されたかと思いきや、また告白。もう飽き飽きだ。別に嫌いというわけじゃないからホイホイ付き合ってみたりはしたけれど、お陰で男タラシ呼ばわり。まぁ、世間一般にはタラシというらしい。というか、タラシって何なんだ。
「…分かったアル。じゃあ、今の彼氏とは別れるネ」
でも最近ではそんな『タラシ』の私も少しは落ち着いていたはずだった。はずだった、と言うのも、沖田が私と一緒に居てくれて楽しかったから。だけど、アイツとは絶対に口を利かない。アイツは、私を裏切った。
沖田も私に好きだと言ってきた。軽くショックを覚えた。喧嘩仲間の、唯一私が心を開く事が出来る相手。私を、恋愛対象に見てくれない。沖田は、私の親友だったのだ。
本当は断るつもりだった。だけど、どう思ってか私の口から出たのは『べつにいいアル』何て言う肯定の言葉。
その言葉を聞くと、沖田は嬉しそうにニカリと笑った。心があったかくなった。
沖田と付き合い始めてからは、私の『男タラシ』もなくなってただ、普通に楽しかった。心が許せる相手だったからだろう。別に付き合い始めてから特別な事なんてしていない。前の男のように、必要以上に体を求めたりもしなかった。それを沖田に言うと、機嫌を悪くしたように、他の男と一緒になりたくねえから。なんて言って私を抱きしめた。
私の中で、罪悪感と言うものが初めて生まれた。それと同時に、こみあげてくる何かがあったのも否定できない。もしかしたら、これが…。なんて思った。
だけど、あの光景を見てどうでもよくなってしまった。一瞬でも、アイツに罪悪感を持った私が馬鹿だった。他の女と、舌を絡めてキスをして、抱き合ってた。これ、絶対私だけがタラシじゃない。
だから、今回のこの告白が良い機会と言うものだ。
すぐに携帯を出して沖田にメールを送る。
『告白されたから別れる』
別れる時はいつもこのメールを相手に送っている。だけど、どうしてだろう。なかなか送信ボタンを押す事が出来ないで居た。やっと押せたと思ったら、すぐに返事がくる。
『今から行く』
たった数文字の、絵文字もないメール。溜め息が出てきた。もうあと数分後にはここに沖田が来る。
「えっと…、田中君だっけ?」
「田口だよ」
「あー…、やっぱりその告白は受けきれないアル」
「どうして?」
「少し、独りになりたいからヨ。お前や、沖田がいると邪魔で仕方がないアル。もう誰かと付き合うって面倒くさいのヨ」
「気が変わったら、言ってくれる?俺、待ってるから」
「たぶん、それは無いヨ」
「分かった。じゃあ、またね神楽ちゃん。俺を絶対好きにさせてみるよ」
二カッと笑った表情が、ジワりと心臓に何か暖かいものを広がらせた。これは、初めて沖田が見せたあの表情に似てる。
一人で屋上のコンクリートに座っていると、ガンガンガンと大きな音を立てて階段を上ってくる音が聞こえた。
「よお。別れるって何?」
「そのまんまの意味アル。告白されたから、別れるネ。大体、最初っからお前なんて合わなかったんだヨ。唯一私が心を開く事が出来る相手だったのに。私を、好きにならないで居てくれてると思ったのに。でも、お前と付き合ってて楽しかったヨ。お前が他の女なんかとキスしてなきゃ、たぶん友達くらいには戻れてたかもネ」
「なんだよ、それ」
「物分かりが悪いやつアルな」
「俺は別れない。キスの話だって、アレは無理やりやられただけでさァ」
「だから、私は元々お前を好きだったわけじゃないし、いつも告白されたら別れてたアル」
「他の男は許しても、俺は許さねえ」
「お前の許しなんていらないアル。お前とは終わりヨ」
「分かった。もう良い」
「ならさっさと帰ってー…っんや!!」
沖田は、私に覆いかぶさって無理やりにキスをしてきた。不意を突かれて抵抗が出来ない。それをいい事に、沖田の行為はエスカレートしていく。
沖田の制服のネクタイで口をふさがれる。怖くて、悲しくて涙があふれてきた。
「俺、ここに来る途中で思いついたんでさァ」
「んーっ!!」
「神楽って、根はすげー優しいヤツって知ってるから、お前が俺から離れられない原因を作ればいいんじゃねーかって」
嫌だ。怖いよ、沖田。
「ガキができちまえば良いんじゃねーの?お前絶対中絶なんてできないし」
本当は、沖田もこんな事したくないんじゃないの?沖田らしくないよ、こんな……凄く悲しそうな顔。沖田にはこんな顔して欲しくない。
まだ準備ができていない所に、沖田の熱いモノが宛がわれた。肢体をおさえつられており、身動きができない私のナカを出たり入ったりといった行動が繰り返される。抱きつく事も出来ない。
今までしてきた中で、愛もなにもない行為。でも、私を見つめる沖田の瞳は、私を心から愛してくれている瞳だった。
熱い液体が中で放たれる。行為が終わると、沖田は処理を済ませて私を抱きしめた。
今まで付き合って別れてを繰り返したのは、独りになるのが怖かったから。沖田と付き合ってそれが倍増した。それでも独りになる事を願った。どうしてと聞かれると、どうしてかは分からない。
「…神楽」
押しこまれたネクタイを、出され大きく酸素を吸い込む。耳元でささやかれた声に、脈が上がるのを感じた。
「……本当は、こんな事したかったわけじゃな…」
「うん。分ってるヨ」
空気の様な声だった。
「別れたくなかったんでィ。好きなんだ。好きじゃ表せねえくれえ、本当に…」
「…私、人を殺すとかそんなのできないアル。もし赤ちゃんできたら…責任取るヨロシ」
「すまね…「私が聞きたいのは、こんな言葉じゃないアル」
「…ありが、と」
「………好きって気持ちが、どんなのか分らないネ。でも、さっきのお前の表情みてチクンってしたアル。告白してきた男の子には、なんとも思わなかったのにネ」
へんなの。そう言って、力なく笑うと沖田は抱きしめる力をより一層強めた。
「本当にヘンでさァ」
「うん」
「独りにしない。俺は、絶対お前を独りにしない。好きとか嫌いとか、今は関係なくて……、あんな事しちまったけど…、俺を信じてほしい」
「うん」
「好きだ」
「大切にしないと、別れるアル」
「…ありがとう」
収拾がつかなくなった。
穴があったら入りたい産物。
リハビリって言う事で、勘弁して下さい。