この前から、私は極度な嫌がらせを受けている。朝、下駄箱には真っ白なルーズリーフが入っていた。表には『スキ』と書かれていた。

机の中には、大量の酢昆布。てめ、酢昆布好きだからって誰から送られたものかも分らないものを食えるか!で…でも、貰ってやっても良いアル。

「あ、チャイナおはよう」

げ、サドが来た。私、コイツ苦手アル。最近やたらと私に対して優しいというか、こいつと居るともう心臓が破裂しそうになるんだもん。

「お…おはようアル」

私だけ、余裕がないって言うか。子どもって言うか…。

「…チャイナ、その…見た?」

「何をアルか?」

「下駄箱の…」

あぁ!あれか!結局あのルーズリーフは誰だったんだろう。

「アレ、誰からか分らなくって捨てたアル。何て書いてあったんだっけ?」

「あ…。そ…、なら別に良いけど…」

サドが風化してるアル。さらさらってどっかに行ってるネ。バイバイ、サド。あ、ちょっとだけツキンって、胸が痛くなったアル。

「で、でも私ついてるアルー!酢昆布がいっぱい机の中に入ってたヨ!入れてくれた人、愛してるアルー」

「マジでか!!」

「は?」

風化していた沖田がいきなり生気を取り戻した。目がきらきらしている。あれ?もしかして、もしかしなくとも、酢昆布をくれたのってサド?

じゃあ、じゃあじゃあ…。下駄箱のルーズリーフもサド?

ポケットの中にくしゃくしゃにしたルーズリーフを取り出す。サドの表情をうかがった。顔が真っ赤だ。私まで、赤くなってきた気がする。

「あ…おま、それ……」

「…これ、サドがくれたアルか?」

頭をくしゃくしゃと掻きながら、サドはコクンと頷いた。か、可愛い…?

「スキなんでィ。チャイナの事が。酢昆布も、俺が…」

「うん。知ってるアル」

「じゃ、じゃあ………」

「やーヨ。私まだ独り身で居たいアル!」

ニカリと笑ってサドを見た。悔しそうなサドの顔、可愛いアル。Sを虐めるのって、楽しいなんて思ってないけど(多分)、ちょっと意地悪したくなったから我慢してよね。

「ちゃんとサドの口から言えれば、考えなくもないアルよー」

しゃがみ込んで顔を真っ赤にしながら見上げてくるサドを後ろに、私は教室を出た。絶対、サド以上に顔が真っ赤だと思いながら、保健室に駆け込んだ。






名無しの権兵衛さん。

(スキでさァ!!)




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