灼熱の太陽が降り注ぐ屋根の下。
クーラーをつけて涼しい環境下の中、何故俺はこんなにも心臓がバクバクと鳴り、滝のように汗が流れ落ちているのか。
原因はこの女だ。
「神楽!!!てめ、またそんな格好でうろうろしやがって!!」
「えー。だって暑いアル」
「クーラー付けてんだろうが。せめて上着くらい着やがれ!」
暑いのはしょうがない。最近、上下素っ裸の変質者も出る異常温度だ。変態を生み出すにはもってこいの季節だと思う。しかし、だ。下はショートパンツをはいているとはいえ、上はブラ。
俺だけの前でならまだしも、今日は土方が遊びに来ている。たぶん、これは旦那のまわし者だ。
「総悟、お前良くこんなんで襲わねえでいれんな。お前なら誰それ居ようと構わず襲っちまうかと思ってたぜ」
「土方さん。俺ァ最近ずっとこの環境の中生活してるんでさァ。襲ったのなんて、10回中2回ですぜ」
「マジでか。お前、案外健全なお付き合いってヤツしてんだな」
「……そろそろ理性ぶっ飛ばしたって良いと思ってるんでさァ。土方さんだって、目の前にこんなのが毎日いたら、誘ってるってしか思わねえでしょう」
「確かにな…。そこはお前に賛同するわ…」
「旦那に言っといてくださいよ。『沖田総悟は健全な暮らしを、美味しそうな餌がそこにあるのにもかかわらず頑張って生活してます』って」
「あぁ。そうすることにするわ。大変なんだな、お前も」
はぁー、っと大きな溜め息をついて神楽を見た。この前買ったお風呂のアヒル隊長の他に、リビングのアヒル隊長・神楽の部屋のアヒル隊長・キッチンのアヒル隊長を買わされたのだ。
そのアヒル隊長達でキャッキャッとはしゃぐ神楽の精神年齢はきっと実際年齢よりもはるかに低いだろう。
「…でも…、何だかんだで凄く可愛いんでさァ」
目を細めて神楽に微笑んだ。気づいた神楽が頬を染めて唇を尖らせる。この顔は、神楽が照れ隠しの時にする表情だ。
「…甘ぇんだな、お前も」
「土方さんだって、神楽には甘いですよね。ま、神楽は譲らねえけど」
「いらねえよ。妹分みたいなもんだからな」
「ふーん。……あ、そうだ。姉上によろしく言っといて下せえ。どうせ今から墓行くんでしょう?」
「お前は来ねえのか?」
「神楽がいやすから」
ニヤリと笑って土方を見た。少し驚いた顔をした土方だったが、すぐに元の表情に戻すと小さく笑って玄関の方に向かった。
俺の後に、神楽がくっついて歩く。なんだか、こっちの方がアヒルみたいだ。
「トッシー!またネー!」
「おう」
「死ね土方」
「お前が死ね総悟」
ニカリと笑ってやると、玄関外に、姉さんの好きだった白いユリの花が見えた。
土方のバカヤロー。