「そ、総悟!!お風呂の…!!」
「あ?風呂がどうしたんでィ」
「お風呂のアヒル隊長が居ないアル!!!」
確かに、今そこに数秒かの間があったとは思う。しかし、顔面上部に影を作らずにはいられなかった。アヒル隊長がなんだコラ。そんなん、昨日テメーが粉砕しちまっただろうが!というか、今はそんな話どうでもいい。
「…かぐ……。チャイナ?」
「むお。懐かしい呼び方アルな。何アルカ?サド」
「お前、俺が彼氏であり一人の男であるこたァ知ってるよな?」
「もちろんアル」
「じゃあ、その格好はよろしくないぜィ。数時間留めていた理性がパーになっちまいまさァ」
「り…せい?」
「率直に言えば、エッチしたくなるってこと」
「……な!」
もちろん、付き合って3年なんだからやる事はもうヤった。というか、付き合ったその日にキス。次の日には深い方。一週間後には生まれたままの姿での愛情表現…。健全な高校生男子なめんじゃねーぞ!
「分かったなら、全身にタオル巻いてくれィ。下半身にだけ…しかも、上半身は手ブラとかすっげぇ苛めたくなっから…」
左手で頭を押さえながら一所懸命理性と欲望を戦わせた。結果、理性勝利。
「明日、アヒルさん買いに行くから…な?」
「むぅ、しょうがないアルな」
「分かったらほら、俺もう行くからな。絶対そんな格好でリビングにくんじゃねーぞ」
「イエス!!」
敬礼をする神楽を、溜め息をしながら横目で見てドアを閉めた。無言でリビングに戻り、ソファーへと腰を下ろす。瞬間、先ほどよりも幾分大きな溜め息が零れた。
神楽は、無防備だ。
それも、寝る時は暑いからと言っていつも下着。紐パンの時は、それはもう理性と戦った。
まぁ、この話は神楽が以前俺の家に長期間泊った時の話なんだが…。
俺は本当に大丈夫なのだろうか。広いリビングに、最近見なくなったお笑い芸人の面白くないコントが響いていた。