学パロ沖神
※沖田君、原作とま逆なくらーい雰囲気。
弱冠、苛められてる的な感じ…。
















何が怖くて、何がさみしくて、自分がどうしたいのか分からなかった。ただ、ひたすらに真っ暗な闇の中を一人でさ迷っているようで、独りびくびくしながら生活してた。

学校も楽しくなくて、何をしても長続きがしない。そんな俺に一緒について来てくれる友達なんて誰一人としていなかったし、俺もそんなの欲しくなかった。

春。クラス中がざわめく中、転入生が来たとかで皆は盛り上がっていた。俺は、どうせそんなのが来ても嬉しくも何もないから、ただ顔を俯かせていた。

転入生は女の子らしい。神楽と言うそうだ。他のクラスの奴らが話しているのを聞いた。ピンク色した髪に、綺麗な青色の瞳らしい。まぁ、どうでもいいけど。

「沖田君は、いっつも一人アルナ。寂しくないアルカ?」

「………」

どうでもいい転入生の神楽が話しかけてきた。俺は、人と話したくないからそれを無視する。神楽はその後も俺に話しかけてきたが、早速友達になったのであろうクラスの女子が『沖田君、あんまり良い話し聞かないから関わらない方が良いよ』なんて言いながら神楽を引っ張って行ってしまったので、誰とも話さずに終わった。

どうせ、仲良くなっても裏切られて終わりなんだと思う。神楽だって、さっきの女子の話を聞いて、もう俺に話しかけてくる事はないだろうと思う。

授業用ノートも、何も学校に何か持って来ちゃいない。いっそこのまま、登校拒否でもしたい気分だった。俺なんかが学校に行っても、どうせみんなの邪魔になるだけだろうし…。

家に帰っても一人だが、学校よりはましだ。誰とも話す事はないし、話しかけられもしないから。人は、嫌いだ。

学校は、休もう。







「へー。神楽ちゃんって、中国から来たんだ」

「そうアル。向こうでパピーが会社してて、ちょっぴ危険な仕事だからって私を日本に預けたネ。たぶん、もう中国に帰る事はないと思うヨ」

「大変なんだね。あ、もう直ぐホームルーム始まっちゃうね」

「そう言えば、沖田君今日来てないアルな。風邪アルか?」

「…神楽ちゃん。昨日も言ったけど、あんまり沖田君とは関わらない方が良いよ?私、沖田君とクラス2年間同じだけど、話した事一度もないから。それに、このクラスの人たちと一歳関わり持たないって言うか、…不気味と言うか…」

昨日仲良くなった女の子と一緒に朝から談話していたら、沖田君の話になった。昨日も思ったけど、なんだか不思議だ。あんなにも騒いでいる教室の傍ら、独り俯いて前を見ようとしない男子生徒。

自分の性格上、そのような者は放っておけないタイプ。きっと、クラスの中でも浮いた感じの人なんだろう。そう思って休み時間に彼のもとへと足を運んだのだが、完全に無視をされ続けた。

顔を見る限り、性格が暗そうな奴ではないと思うのだが、性格の問題じゃないということが感じ取れた。彼の、精神的問題なんだと。

しかし、このクラスも問題だと思う。浮いている奴が一人いるのに、何故誰も仲間に入れようとしない。私だって、沖田君の事はまだ知らないが、何故彼を知ろうとしないのだろう。

「先生。沖田君、どうして今日休みなんですか?」

ざわめいているクラスが一瞬静まった。

「あ、あぁ…沖田…ね。先生、ああいうタイプはちょっと…だから、連絡も取りたくないというか…」

このクラスは先生までもが可笑しい。変だ。

「私、今日沖田君の家に行ってみますヨ。何か渡さなくちゃいけないプリントとかあるアルか?」

「え、あぁ。じゃあこれを頼むよ。…じゃあ、放課後によろしく」

放課後か。時間もたんまりあるし、沖田君に色々聞いてみよう。そう思って、始まった授業を憂鬱に思いながらも聞いていた。







チャイムが鳴ったので、玄関を開けた。すると、そこにいたのは昨日転入してきた神楽だった。無言でプリントを受け取ろうとすると、なぜか無理やり家の中に侵入してきたから驚きだ。

「へー。でっかい家アルな。一人で暮らしてるアルか?」

コクリとうなずく。人を家の中に入れたのは何時振りだろうか。いつもなら怖くて開けない玄関の扉を開け、そこに居たのが神楽だった事に安心した自分が居た。

「…学校で、お前だけ居なかったから心配したアル。…学校嫌いなのカ?」

無言の俺に、神楽は何にも言わずにただ座って真っ白な壁を見ていた。

「まぁ、言いたくなかったらいいけど。…今日ここに来なかったら、ずっと学校に来ない気がしたネ。女の勘ってやつアル」

ニシシと笑う神楽に、ポッと胸が暖かくなるのを感じた。

「…明日は来いよナ。お前が一人で心配で、きっと性格的には明るい方なんだと思うアル。違うアルカ?」

一人で話し続ける神楽。でもどうしてだろう。そんな彼女が、うざったらしくもなんとも思わない。それ以前に、……もっと。もっと、彼女の話を聞いていたいと思ってしまう。

「私、性格上そんな人たちが気になるんだけどネ、でも沖田君の事はもっと知りたいアル。昨日転入してきた奴にそんな事言われたくないだろうけど、私、沖田君の見方だから」

そう言って笑う彼女に、もっと傍にいてほしいと思った。

「じゃあ、無理しないでいいアルよ。自分が学校に来たくなったら来ればいいアル。私、それまでちゃんと沖田君の分のノート取ってるし、ここにも顔出すからネ」

大きく手を振って帰る神楽に、生まれて初めて誰かが傍にいてくれる嬉しさを知った。

その後も神楽は俺の部屋を訪ねてくる日が続いていた。そして、神楽に段々と心を開いている自分が居ると言う事も分かってきた。神楽なら、大丈夫かもしれない。神楽なら…、俺を裏切らないかもしれない。

「沖田君、元気アルかー?」

あいさつから始まり。

「今日は学校で色々あったアル!」

学校での出来事を事細かく俺に教えてくれる。

「早く、沖田君も学校に来れるといいネ!」

そう言って、笑いながら帰っていく。

「じゃあまた明日!」

「…また、明日…」

小さくつぶやいた言葉を、彼女はしっかりと拾ってくれて、ふわりと頬を染めて笑ってくれた。

「やっと、話してくれたアル」






今日は神楽が来なくて、まさか裏切られたのではないかと疑った。真っ暗の部屋に、小さくうずくまって神楽が来てくれるのを待った。なのに、神楽は来なかった。

折角楽しかった日々が続いていたのに、もう、誰とも話す勇気なんて湧いてこず、誰も信用をしたくなくなった。

すると、傍らに置いてあった電話機が大きな音を立てて鳴り始める。どうしてか、取らずには居られなかった。とらなかったら、きっと後悔すると思った。

恐る恐る電話機を耳の押しあてると、クラスの、神楽と仲の良かった女子生徒が泣きながら俺に電話をかけてきたのだ。

話が終わる前に、家を出たのはあまりにも酷だったから。






沖田君の家へ行っていたら、道に飛び出そうとしている小さな子供の姿があった。すぐ側には乗用車が迫っている。間に合う。そう思って駆けだしたら、全身に鋭く、激しい痛みが走った。

あぁ、轢かれたんだ。子どもは…、ちゃんと無事だろうか。

「…痛い…ナ。…今、から…。沖田君の家、…行かなくちゃ…いけないのに」

倒れた私の側に、助けた子どもが駆け寄ってきた時点で私の意識はフプツンと途切れた。

ごめんネ。沖田君。






「先生!!神楽は、神楽は無事なんですかィ?!」

初めて聞く俺の声に、クラスの担任は唖然としているのか何も答えない。それは、他のクラスの奴も同じだ。

「無事なのかって聞いてんでィ!」

「…い、今は手術中で何とも言えない…」

「…っ」

子どもをかばって轢かれたそうだ。彼女らしいと言えば彼女らしい。一度でも疑った自分を殺したいとさえ思った。

「…お、にいちゃん」

クイッと服の裾を引っ張られる。神楽が助けた子どものようだ。泣き過ぎたのだろうか、瞼が腫れあがっている。

「僕の代わりに、お姉ちゃんが…」

泣き始める子どもに、なぜか微笑みながら答える。

「大丈夫。神楽は、あんな事じゃ死なないから。あいつは、俺も助けてくれたんでィ。大丈夫」

自分にも言い聞かせるようにそうつぶやく。俺を変えてくれた神楽。人を信じる心をくれた神楽。

手術が終わったのか、赤いランプが消えた。きっと、大丈夫だ。…何故だかは分からないが、確信が持てた。

「手術は成功です。今後の生活には多少の支障が出る場合がありますが、大きな後遺症などは無いでしょう」

笑顔でそう言った医師に、とても感謝した。俺の、大事な人を。掛け替えのない人を救ってくれて。

「ありがとうございやした」






病室は怖いくらい真っ白だった。神楽はその中に居る。

顔も、腕も足も傷だらけだ。

「早く、目を覚ましてくだせィ」

握りしめた手が、温もりを持っていることに安心する。生きている。と、実感できる。

「神楽、俺…」

アンタが居ないと生きていけない。アンタが俺の世界の全てを変えてくれた。俺の、誰にも知らない性格も見抜いてくれた。

「神楽だけが…、俺をちゃんと見て、理解してくれて…」

ポタポタと涙がこぼれる。泣いたのなんて、十数年ぶりだった。

「神楽…、俺…。俺、アンタが好きだ」

握りしめた手が、キュッと締まる。ハッとして神楽を見た。吸い込まれそうな、青色がそこにあった。

「…一緒に、学校行くアル。…ネ?」

泣き笑いなんて、一生しないと思ってた。

これも全部、神楽が教えてくれたんだ。

「スキ」

空気のような声で、神楽が呟いた。






いとしい人。






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