学校に登校する前と言うのは、実に気が乗らない。

制服に着替えて、髪をある程度セットしてそして飯を食って歯磨き。

昨日電話した時はあれほど今日が待ち遠しかったというのに、よくよく考えてみれば神楽から『戻ろう』なんて一言も言われていないのに気がつくと、それはもう自分でも驚くほど気が滅入ってしまった。

「はぁ…」

「なーに、総ちゃん。溜め息なんか吐いちゃって。…神楽ちゃんと仲直りしたのかしら?」

「え、まぁ。仲直りって言えばそうなのかもしれやせん。…距離置こうって言われて、自分が分んなくなるくらいショックを受けてるみたいなんです」

「ふふ。それって、ちゃんと総ちゃんは神楽ちゃんを想っているって事でしょう?その気持ちを、ちゃんと神楽ちゃんに昨日言ったのなら、きっと神楽ちゃんは分かってくれてるわ。…総ちゃんは、神楽ちゃんを信じてないのかしら?」

「いえ、信じてやす。本当に、心から」

「じゃあ、きっとそれでいいのよ。総ちゃんは、きっと間違った答えなんて選ばないもの」

「どこからそんな自身が生まれるんです?…でも、有難うございました」

「いいえ。ほーら、早く学校へ行きなさい?総ちゃんの事、待ってるかもしれないわ」

「いや、それはねえかと…」

「はいはい。いってらっしゃい」

笑顔で笑う姉さんは何だか、自分の事のように嬉しそうに微笑んでいて。なんだかすごく暖かかった。

半ば強引に玄関へと出された俺は、仕方なくローファーへ足を埋める。鞄の中に入ってる携帯が震えていたが、今は取る気にならずにそのまま外へ出た。



あ……。



「…かぐ、ら?」

「総悟!!!電話したのにどうして出ないアルか!!」

頬を膨らませて俺を睨む神楽。こうやって会ってまともに話したのは何時振りだろうか…。

「え、でもどうして…俺、読めな…」

「だー!!もう良いアル!!十分嫉妬してたアル!!ふざけんじゃねーヨ!私がどれだけ頑張ったと思ってるアルか!!嫉妬したことなんて生まれてこれっぽっちも無かったのに!!ココのところがもやもやして!!あーもう良いアル!!ほら、さっさと学校行くアルよ!」

そう言って手を繋いできた神楽。そういや、こうやって手を繋いだのだっていつぶりだろう。あぁ、もう。なんかこの前までしてた喧嘩なんてどうでも良くなってきた。

「お、おう」

「仲直りアル」

背伸びをして近づいてきた神楽の唇は、俺の頬にくっついた。


俺、もう死んでも良いかも。


喧嘩をして更に深まる絆って、この事だろうか。






真実です。



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