思い出と誘惑。『思い出』の続き。
















「・・・どうした、総悟・・・。顔色が悪いぞ?」

「・・・アンタだって、大体は察しがついてるんでしょう?」

「チャイナ娘か?」

「無理に決まってるんでィ・・・あんなん。拷問でさァ・・・」

総悟が嘆き悲しんでいる姿は非常に見物だった。まるで一生を山小屋で暮らし、食事保護も狩りで済ませている野生人間が、一か月ほど水のみしか摂取していないかの如く、真っ青だ。

「約束したんでィ。襲わないって」

「で、理性飛ばさないように一生懸命で隣に寝ている餌を横目に一人で格闘してたってわけか・・・」

「違いまさァ・・・。・・・・頂いちまったんでィ!美味しく!!アイツだって最後ヤる気になったくせに、終わったらもう一生セックスしないって!!!」

「・・まぁ、なんて言うんだろうな・・もっとオブラートに包めねえのかよ。ただ一つだけ言えるとしたら、お前は馬鹿だって事だろうな。というか、ふつうに考えて我慢しすぎて真っ青なんじゃねーかって思ったわ」

「考える前に行動しちまうんでィ。分かれよ土方コノヤロー」

「お前の理性の無さに呆れるぜ」

あぁ。なんて言いながら頭を抱く総悟はそれはそれは笑い者だ。こんな総悟に出来るのはたぶん、チャイナ娘くらいだと思う。いや、チャイナ娘だけだろう。

「ありがとうございやす」

「褒めてねぇよ」

「あちゃー」

シバくぞボケ。そう言おうとしたら旅館の食堂入り口で、今まさに会話の発端となっているチャイナ娘が居た。髪を下ろして誤魔化しているのだろうが、昨夜この万年発情期ド阿呆野郎に付けられたであろうキスマークが丸見えだ。きっと食堂に行けば質問攻めに遭うに違いない。

まぁ多分、万年発情期ド阿呆野郎が奴の傍を離れないだろうが、それでもド阿呆にはデリカシーと言うものが無いと自身の中では確信しているのでそれも無意味に終わりそうだ。質問攻めに遭っていても、きっと奴なら耳元で更に恥ずかしくなる事を言ってチャイナ娘を追い込むに違いない。哀れなものだと他人事にように思った。いや、実際他人事なのだけれども…。

「トッシー!おはようアル」

「今思ったが、総悟とは一緒に行かなかったんだな。朝から総悟が俺たちの部屋をノックしてきたから何事かと思ったけど」

「うっせー土方。黙ってろィ」

「あ、トッシー。今日は誰と一緒に自由行動するアルカ?」

「え、ちょ。神楽?まさかお前コイツと…」

総悟が焦ったような声色でチャイナ娘に問う。そんな総悟にニヤリと笑ってチャイナ娘は、俺の腕に腕をからめて見下したような声で言った。

「そうアル。私、トッシーと一緒に自由行動をすることに決めたネ。総悟は哀れなゴリラと一緒にむさ苦しい中を、むさ苦しい奴と一緒に歩き回るヨロシ」

冗談である。

絡めてあるチャイナ娘の腕が微かにだが震えていた。多分これはアレだ。笑いを堪えている時の震えだ。

「土方さん。分かってますよね。なーに腕絡められて鼻の下伸ばしてんだか。あぁ、あれですかィ。姉さんに振られたからその腹いせを俺にぶつけてるって奴?」

「あのなー。俺は鼻の下なんか伸ばしてねぇし、ミツバに振られても……ぁ」

「ふーん」

「ちが、誤解だ総悟!俺は別に付き合ってなんか…!」

「誰も、アンタと姉さんが付き合ってるとかそんなん聞いてねーけど」

目の影を真っ黒にした総悟がそこにいた。あぁ、俺、死んだ。グッバイ、俺の薔薇道…。









「あちゃー。トッシー気絶してるアル。どーするアルカ、これ」

「そこら辺にでも捨ててろィ。…ていうか、俺達で遊びやがったなテメー」

「遊ばれる方が悪いアル。それに、お前嘘ついたネ。エッチも当分ないアルヨ」

「やっぱり…」

「でも………。これから、自由行動で一緒に回って、私の昼食プラス間食代奢ってくれるって言うなら、なしにしてやっても良いアル」

つ、ツンデレだ!世に言うツンデレだ。頬を真っ赤にして、睨みつけてくるなんて、もう半端ない。俺を萌え殺したいのだろうか。それとも熱中症でぶっ倒れさせたいのだろうか。兎にも角にも、俺がこれからとる行動は一つしかないだろう。選択肢は、元々一つしか与えられていないも同然だ。

「昼食も間食も、夜食でも何でも奢ってやらァ!チクショー!!」

「総悟だーい好きアル!」

修学旅行バンザイ。こんな祝福の時が、数日続くと考えただけでも俺は鼻血で大量失血死しそうだ。いや、死んではならない。神楽と言う栄養分を十分に満喫しなければならないのだから!

「ほら、行くぜィ。飯、食い行くんだろィ?」

「行くアル!!」

飛び跳ねる神楽の、制服のプリーツスカートがめくれて昨日『俺が見た』桃色のパンツが丸見えだ。そう言えば、ブラもパンツと同じだったなと思い出しながら、やっぱ勝負下着じゃねーか。なんて重要なポイントに思考を巡らせていた。

俺って変態?なんとでも言うが良い。俺は神楽限定で、変態になるんでィ。

「総悟、鼻の下伸びてるアル。トッシーに何にも言えないネ」

「俺は良いんでィ。あ、今から何も言うなよ?脳内で神楽犯しシュミレーションすっから」

「お、おまわりさーん!!」

「俺、将来警察官になろうと思ってるんでさァ」

「犯罪者の間違いじゃないアルカ!!」

「まぁーまぁー」

「ヘルス!!!トッシーヘルスミー!!」

「トッシーなら今頃海の藻屑でィ」







思い出と誘惑






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