現代幼馴染パロ(社会人×社会人一歩手前)















夕暮れ時の公園は、何とも言えないくらい静かで、先ほどまで子どもたちが乗っていたブランコなんかもキー…キーと静かに鳴っているだけだった。

家に帰るでもなく、ただボーと夕日を眺める。今日の夕飯はなんにしようか。またレトルトにでもするか。あぁ、明日も仕事だ。なんて考えていたら、今眺めている夕日がとてもじゃないが楽そうに見えて仕方がなかった。

よっこいせ。なんてジジ臭い言葉をいつから吐くようになったのだろうか。

「ただいまー・・・」

と言っても返事はなし。当たり前だ。俺は結婚もしていなければ彼女すらいない。姉さんは田舎の家で土方コンチクショーと暮らしているし、学生時代同じ学部だった近藤さんはお妙さんという人を追いかけてどこかに行ってしまった。

つまり、俺は一人なわけだ。

何か良い出会いなんてものも望んではいないし、結婚願望だってないが、このまま一生独身と言うのは少しばかり気が引ける。と言うより、俺の老後はどうなる。

「お、あったあった」

冷蔵庫からレトルトのカレーを取り出した。もう、このレトルト様にお世話になってどのくらいが経つだろう。人さまが手作った料理なんて最近は食べてない気がする。あぁ、そう言えばこの前(3カ月前くらい)姉さんが来た時に、オムライスを食べた気がする。オムライスが食いたい。

ご飯はたしか炊飯器に入っていた気がする。いつの飯か分からねーけど。

『ピーンポーン』

こんな時間に誰だ?いや、こんな時間と言うほど時間は遅くはないのだが…(7時くらい)。

「へーい。今開けまさァ…!!!」

「総兄!!!」

視界に飛び込んできたのは、どこか懐かしい匂いのするピンク色だった。あれ?俺の知り合いにこんなの居たっけ?・・・なんて。簡単に忘れるはずがないだろう。特にこのピンク色。俺はこのピンクに一体どれだけ殺されかけたと思っているんだ。

「神楽?!」

「お久しぶりアル!総兄!」

「ていうか、何でお前がここにいるんでィ」

久しぶりの対面。少し前までは中学生だったきがするのに、もうこんなにも大きくなったのか。

「それがね、私、総兄の働く会社に勤めることになったアル!!だからね、部屋が見つかるまで総兄の部屋に同居させてもらうために来たネ!!」

神楽は、俺が高校1年の時に中学3年で、俺が高校を卒業したと同時に高校に入ってきた奴だ。小さなころから俺と神楽と姉さんと土方と近藤さんは仲が良くて、ずっとみんな一緒だった。神楽とは所謂幼馴染と言う関係だ。

「は?マジでか。お前頭良かったんだな・・・。今年のウチへの就職低かったっていうか数人くらいしか受け付けなかったのに・・・」

「そうだったアルか?うーん。でもごっさ就職試験には人が居たアル」

「ウチの企業は大きいからねィ。給料も良いし」

「だーかーらー!いいアルか?総兄の部屋に住んでも?あ、もうミツバさんには言っておいたアル!!!」

「・・・姉さんが良いって言うんだったら・・・。まぁ、しょうがないか・・・」

「ひゃっほー!!!」

両腕に大きな荷物を抱えた神楽はその場でジャンプをする。ていうか、荷物多すぎだろ。部屋があったから良いものを・・・。もし部屋が無かったり小さかったらどうするつもりだったんだろう。

「明日、また引越し屋さんが来て荷物運んでくれるアル。だから一応これは必要最低限の物ネ」

あぁ、なるほど。こいつの必要最低限は、旅行バック6箱分なのか。どうやって此処まで運んで来たんだよ。

「あれ?そう言えば、総兄はご飯食べたアルか?」

「いや、今からそうしようと思ってたらお前が来たんでさァ。神楽は?飯食った?」

「食べてないアル。・・・というか、総兄ちゃんとご飯食べてるアルか?前より痩せた気がするヨ」

「まぁそりゃあレトルト様に頼ってるからねィ。痩せちまうのもしょうがないんじゃねーの?」

溜め息を吐きながら神楽を中へ入れた。すると、神楽は旅行バックの一つに詰め込んだスーパーの袋をとりだす。中には野菜やら肉やらと、豊富な食材が入っていた。

「ミツバさん心配してるアル。総兄がちゃんと食べないと、みんな悲しむネ!今日から、ご飯は私が作るアル。総兄は、ちゃんと食べるヨロシ!」

目が点になった。まるでこれはアレだ。・・・新婚じゃないが、夫婦のようだ。

「お、・・・おう。お前、料理できんのかィ?」

「なめないで欲しいアル。近所のおばちゃん家に行ってご飯作ったりしてたアル」

「・・・んじゃ、お願いしまさァ・・・」

心配だけど、ちょっと今日は疲れたから神楽に頼んでしまおう。久しぶりの人の手料理に、すこしだけテンションが上がった。




* * *



「ど、・・・どうアルカ?」

「・・・美味い」

神楽はエスパーなのだろうか。エスパーだったら良い。神楽が作ってくれたのはオムライスだった。まるで、姉さんが作ったみたいなふわふわの卵に、チキンライス。

本当に美味しくて、全て平らげてしまったほどだ。

「そうだった!忘れるところだったアル!・・・はい、総兄!今日は総兄のお誕生日アル!!これ、ケーキ買って来たネ!!」

神楽がとりだした箱の中には、『総兄、誕生日おめでとう!』と書かれたチョコレートケーキだった。

ハートをかたどったのだろうか、可愛らしいスポンジの形の上に、チョコホイップが満遍なく塗られた美味しそうなケーキ。

そうだった。今日は俺の誕生日だった。

「お誕生日おめでとう!総兄!!これ、ミツバさんたちから贈り物アル!!!」

そう言って神楽は小さな箱を取り出す。中に入っていたのは・・・。言えるわけがないだろうが。いつもは日用品やそんなものなのだが、今回は違った。おそらく、神楽も箱の中身は知らないのだろう。

「ねーね!何が入ってるアルか?」

「見せねー!!」

「どうしてヨ!」

「どうしてもでィ!」

「けちー」

「ケチで結構!いいからほら、包丁持ってこい!ケーキ切ってやるから!!」

「ケーキアル!!ちょっと待っててネ!!今からダッシュでとってくるアル!!!」

ニコニコしながら包丁を取りに行った神楽の背中を見つめながら、口元を押さえて一人頬を赤くした。こんな姿、神楽にでも見られたら俺の人生はおしまいだ。

「・・・いつから知ってたんでィ。姉さん!!!」

どうやら姉さんも俺と同じで少しばかりSっ気があるらしい。今頃、田舎の家でニヤニヤ笑っている姉さんと土方コンチクショーが居るのだろう。なんだかとても恥ずかしかった。

今度、箱の中にある写真をアルバムの中にでも挟んでおくとしよう。

神楽が寝ている隙に、俺がちゅーした写真と、二人で仲良く眠っている写真を。







結婚願望がないなんて嘘!





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