3Z恋人(沖神+その他)


















私は大きな失敗をしてしまったのかもしれない。いや、大きな失敗をしてしまった。教室の自分の机の上でこちらをジッと見つめる……違う。睨みつける私の彼氏。彼にはとても失礼極まりない事をしてしまったのだ。

「だから、本当にゴメンって言ってるアル」

「別に、気にしてねえし」

気にしてる!!ごっさ気にしてる!!

「……今度ちゃんとお祝いするから、機嫌直してほしいアル!!」

「だから、大丈夫だって言ってるだろィ。別に誕生日忘れられて、俺一人自分の部屋で寂しく2人分のケーキ食ってた事ぐらいで俺が機嫌悪くするわけねえじゃねーか」

「うん。ごめんね、総悟。本当はすっごく寂しくて機嫌悪かったんだよナ?2人分のケーキ一人で食べてしまうくらい怒ってたし、お腹減ってたんだよネ?」

ムスっとした表情で窓の外を眺める総悟。なんだか子どもっぽくて、可愛かった。よしよしなんて言いながら頭を撫でてやれば、頬を赤く染めて更にプイッと向こうを向いてしまう。

ただいまお昼休み。教室には勿論私たち以外にもクラスメイトが居て、姐御はゴリラを締めているし、なぜかは分からない微妙な組み合わせだがトッシーとヅラがカレーとマヨについて熱く語っている。

ハム子に至ってはジャラジャラとした携帯を片手に総悟を写メっているし…て、何勝手に写メってるんだ。一応私の彼氏だぞ。

「一応って何でィ。一応って。一応じゃなくて本当に彼氏だろィ。誕生日を愛しの彼女に忘れられたけど別になんとも思ってねえ彼氏」

「十分根に持ってるアルな…。本当にゴメンヨ。あ、そうだ!これね、この前商店街の福引きで当たったやつ!お風呂に入れて、シュワシュワーってなるやつあげるアル!!本当は今日家で使うつもりだったんだけど、総悟にあげるアル!!また今度しっかりとした誕生日プレゼントあげるから、今はこれで我慢してほしいネ」

にっこり笑って総悟の手を包み込むように渡せば、きっと総悟は機嫌を少しだけだけど良くしてくれるはず!!

「……べ、べつに貰ってやってもいいぜィ」

耳まで真っ赤にして拗ねるそぶりを見せる総悟。本当に可愛い。もしかしたら、そこら辺に居る女の子よりも可愛いかもしれない。よく、女顔がコンプレックスって言ってるけど私的には可愛い方が母性本能をくすぐられてグッとくる。総悟の、そう言ったところがまた好き。

「素直じゃないアルなー。今日は、総悟の言う事何でも聞いてあげるから、許してネ?」

「マジでか。………何でも…。うん、じゃあ許す」

嫌な予感しかしないのは多分私だけじゃないだろう。先ほどからこちらを心配そうに見つめてくる九ちゃん。ありがとう、九ちゃん。私、九ちゃんの事大好きだヨ。

「た、妙ちゃん!!!!」

はい違ったー。九ちゃん姐御見てただけだった!!ニヤリと笑って私を見る総悟。あぁ、こんな顔をする総悟はきっと良い事を全く考えていない顔だ。さようなら、みんな。私が総悟の誕生日を忘れたばかりに私は総悟に良いように使われるのね。自業自得というのだろう。

「今日は、俺の部屋にずっといる事。そんで、このシュワシュワなる奴風呂に入れて一緒に入ること。晩飯は神楽が作って、その為の買いだしも一緒に二人で学校帰りに行く。誕生日プレゼントは神楽」

はい?え、どういうことですか?

つまり、今日は一日ずっと総悟の家に居て、一緒にお風呂入ってご飯も作って…。誕生日プレゼントは私で…って。なんだかこれってまるで夫婦みたいじゃないか。

「将来の予行練習でさァ」

ニカリと笑う総悟は、それはもう幼くて、悪戯っ子のようなそんな笑みを私に向けていた。

「もうすぐ授業始まるぜィ。次は…国語か。銀八だからどうせジャンプの朗読だろうし…、俺最後まで寝てるから終わったら起こして?」

「あ、うん。別に構わないアル。うん…。機嫌直してくれたのなら何よりネ」

顔を真っ赤にしているところを見られたくなくって、準備した教科書で顔を隠した。授業が始まってからも、そんなしていたから銀ちゃんが不思議に思って声を掛けてきたけど、フルフルと頭を振って回避した。総悟は私と銀ちゃんが話すところをみると凄く機嫌が悪くなる。私も、総悟が他の女の子と話すところを見ると胸がもやもやするから嫌。多分、嫉妬っていうものだと思うから、私も極力銀ちゃんと話さないようにしているのだ。

総悟は比較的眠りが浅い。私は一度寝たらなかなか起きなから、前に総悟にヤラシイ事を散々された。気づいたのは本番に入る前だったけど。

総悟の言ってた通り、今日もジャンプの朗読だった。こちらに顔を向けて寝ている総悟の顔をジッと眺める。やっぱり綺麗な顔をしていて、女の子の私でも羨ましいくらいだった。その綺麗さを、ハム子にも分けてあげたいくらいだ。

「んじゃ、今日の授業は終わりー。掃除してさっさと帰れコノヤロー」

「先生はジャンプの掃除をした方が良いと思いまーす!」

「それはジャンプを捨てろって事か?あぁん?先生は良いーの。ジャンプは枕にでも何でもなるからとって置きたい主義なんですぅー」

「その語尾がウザいです、先生」

新八がメガネを光らせて言った。てうかなんだよ、その眼鏡。体の99%がメガネで出来てるくせに。

「誰だ今メガネっていったやつ!!!」

「うっさいアル新八。総悟が起きてしまうヨ」

「もう起きちまったよ」

「あ、おはようアル総悟」

欠伸をしながら総悟が起き上がる。あ、頬っぺたにボタンの跡が残ってる。

「センセー、俺と神楽もう帰って良いですかィ?ちょっとお仕置きがあるんで」

「な、お仕置きって何するつもりアルか!!」

「何って、…ナニ?」

「へ、変態アル!!」

ギャーギャーと騒ぐ教室で、銀ちゃんは溜め息を吐きながら言った。

「もー面倒臭ぇから今日は帰れー。あ、近藤と土方は残れよなー。お前らの出した作文をもう一度出し直してもらうから!ていうか何あの作文!『お妙さんと俺の成長日記』って!キモいから!そんでもって土方ァー。アレはやっぱ駄目だろ。何、あの『新食感マヨ』って。マヨに食感も触感もないからね!!」

て事で終わり―。なんて言う銀ちゃんの声に、総悟は素早く反応して私の腕を握って教室から出て行った。

「ちょ、総悟!!もっとゆっくり歩いてほしいアル!」

「だって今から買い出しだろィ。早く行かないと、酢昆布無くなっちまうかもしんねーぞ?」

「マジでか!じゃあ行くアル!酢昆布と、今日の夕飯買って帰るネ!」

「おう。ちゃんと祝ってくれよな。ていうか、もう俺の誕生日忘れるんじゃねーぞ」

「任せるヨロシ!今度はちゃんと祝ってあげるアル!!」

ギュっと総悟の手を握って笑って見せた。付き合ってから随分経つけど、やっぱり総悟は私の『デレ』と言うものに弱いらしい。頬を真っ赤に染めて手を握り返す総悟に、飛びつきたくなった。




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