現代パロ
沖(→)←←←神

















あれはまだ夜も明けぬ頃の事でした。

火のついたように騒がしくなる町で、私は燃えるような恋をしたのです。

「お…、王子様アル」

「神楽ちゃん?」

一目惚れと言う奴なのでしょうか。心臓は鳴り止まず、四六時中私の王子様の事を考え続ける日々が続いたのでございます。

一週間ほどで幾分渡す微気持ちの高鳴りゲージも落ち着いてきたのでありますが、ひょんな事がきっかけとなり、また私と、私の王子様が再会を果たす事が出来たのでありました。









熊も起きだす春の頃。

私は友人の姐御こと、妙に誘われて、『合コン』というものに参上しておりました。タダでご飯やお酒を鱈腹飲み食いできると言われたのであります。

「さぁ、神楽ちゃん。たんとお食べなさい」

「え、あ…ありがとうアル。姐御」

女性だけの何かの会であると思っていたのでございますが、そこにはなんと男性の方もおられまして、男性と言う生物は坂田銀時、通称銀ちゃんと私の王子様だけだと思っておりましたので、私は何とも言えぬ雰囲気に流されていたのでございました。

「お妙さん!すみません!!近藤勲一生の不覚。もう一人連れてくるはずの男が遅刻してもうすぐ来るとたった今連絡がきました!!」

「あら、私は貴方こそ遅刻して来て欲しかったものだわ。それに、その遅刻して来た人がなんであろうと、神楽ちゃんを楽しませたくてここに来たの。いらない報告ありがとうございました」

ニコリと微笑む彼女の美しさと言ったらもう。撫でられる頭が何とも恥ずかしくなってきてしまうのでございます。暖かいような、嬉しいような。頬を染めずにはいられなくなりました。

「あ、姐御!私、ポテトフライが食べたいアル!」

「はい。神楽ちゃん。どうぞ」

「ありがとうアル!!」

彼女にとって私は妹のような存在。私にとって彼女は姉のような存在なのであります。嬉しい事、悲しい事、辛い事があれば一番に相談してしまう相手でございまして、つまりは親友と言うわけなのであります。

「あー。遅れました。すいやせん」

私は自分の眼を疑ってしまうくらい驚きの光景を目撃したのであります。もしかしたら運命なのかもしれません。乙女と言うのはこのような事を言うのでしょう。また私の心臓の高鳴りが激しくアップする週間が続きそうな予感がいたしました。

フォークの一本一本に突き刺さった5本のフライドポテトはそのままに、先ほど入ってきた彼をジッと見つめていたようです。彼が私の視線に気づき、こちらへ歩み寄ってきました。

「あれ…あんた…」

「何アルか?」

「いや、何でもねえ」

我ながら可愛くない態度であるとは十分に熟知しておりますが、彼が出会い際に言いかけた言葉が気になって気になって仕方がなくなってしまったのでございます。そうです。彼こそ、私が一目惚れとやらをした張本人であります。

「こんにちは。俺、沖田総悟っていいやす」

そして、甘栗色の髪をした、私の王子様なのでございます。

私の王子様はポケットから携帯を取り出すと片手を器用に動かして誰かにメールを打ち始めました。誰になのでしょうか。もしかすると、彼女さんかもしれません。私はだんだんとこの場に居る事が出来なくなってしまい、席を立とうとしました。

私の淡く色づいた恋というものは、儚く散ってしまったようです。

不意に右腕を掴まれたようで、私の体は後方へと倒れるように傾きましたが、何かが私のクッションになって頭をぶつける事はございませんでした。しかし、妙に暖かく、心地が良い温もりでしたので、一瞬でもその暖かさに酔ってしまいそうになりましたが、寸でのところでお気を確かに持つ事が出来たのでございます。

「神楽」

耳元に聞こえた私の名前に、私は全身の血液が顔に一点するかのように顔が熱くなりました。

「帰んの?」

王子様は小声で私だけに聞こえるようにそうおっしゃいました。私はどうして良いか分からずに、コクンと頷きます。瞬間、耳朶を甘噛されて、私のものではない声が出されたように感じました。

「俺、やっぱりアンタの事知ってまさァ」

「…あの…っ」

「どうしてかって?」

コクコクと頷いて王子様を見た。

紅色の瞳が、私を突き刺すように覗き見られて、体の芯から彼に焦がれていると思い知らされたのでございます。

「俺が、アンタの事を、アンタが俺を見始めるずっと前から、ずっと見てたからでィ」

鼻先をちょんっと突かれて、額に唇を落とされました。あぁ、やはり恋と言うのは難しいものです。私は更に王子様の虜になってしまったのでございました。





桃色恋日和




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