懐かしい。プリクラを見つけた。

今日が記念日だったんだ。

お互いの名前と日付が入ったプリクラは、小物入れの中に窮屈そうにしまってあった。

「ぶっさいくな顔アルナ」

二人とも。

おどけた顔の私と総悟は、これを撮った後二人して爆笑したんだ。

「・・・きっと今頃他の女(ヒト)と一緒アル。ムカつくネ。私だけ記念日を知ってて、アイツが知らないなんて」

さっさと忘れるのがやっぱり良いのかもしれない。どうして私だけ悩まなければいけないんだ?

理不尽ではないか。

その時、家の電話が静かな室内に鳴り響いた。

「もしもし?」

出たはいいが、掛けてきた本人が何にも言わないので、イライラした口調で言った。

「誰アルか。何にも言わないなら切るアル」

人差し指を棚の上でコンコンと鳴らした。数回鳴らしたところでやっと電話の相手が答えた。

『・・・あの、俺だけど』

ハッと息を飲んだ。

「・・・総悟?」

『・・・あぁ』

どうしてだろう。心臓がムカつくくらい、冷静に、一定の音を立ててなっている。

「何アルか。私、今忙しいアル」

自分でも驚くくらい冷たい口調だった。総悟に対して、私は怒っている。

『・・・あ、その。今日記念日、だったろ?』

覚えててくれたんだ。

「そうアルナ」

『だから、電話くらいしようと思って。携帯に掛けたら、絶対出てくれないと思ったから・・・』

「良く分ってるアルな。出ないアル。今だって切りたくてしょうがないネ」

『すまねえ』

「もう良いヨ。お前はもう信用ならないからネ。今だって、どっかの女と一緒いるんでしょ?切って良いアルか?」

『ま、待て!!』

受話器の向こう側で、何かが崩れる音が聞こえた。ついでに慌てふためいてる総悟の声も。

「・・・電話出たんだから、もう良いダロ?」

『だから待てって言ってんだろィ!!』

いきなりの強い口調に、ピクリと手が止まった。

『俺は女となんかいねーし・・・、てか、ある意味居るけど姉さんだし!それに今まで居た女どもは、アイツらから勝手にひっついてきたんでィ。だから、浮気とかそういうのじゃねえ!』

きっぱりとそう言う総悟に、少しだけ負けた。

「・・・で?それがどうしたアルか」

だって、他に言葉なんか思いつかない。だってこういう時、どう答えればいいのか分からないから。

『俺は、神楽がちゃんと好きでィ!!』

電話越しで聞こえる『あらまぁ』なんて言うミツバさんの声に、少しだけ笑えてきた。

『何笑ってるんでさァ』

久しぶりに笑った。

「記念日、覚えててくれてありがとう」

そう言うと、総悟の答えを待たずに電話を切った。



揺れた。
なんて・・・ね?



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