眩しい太陽の光が私を瞼の裏まで差し込んだ。

「んう…」

「チャイナ?」

ここは…、保健室の窓際のベットらしい。どこかで聞いた、優しい声に誘われてやっと覚醒した。

「そーご…?あれ、うさぎさん…」

視界がはっきりし始めると、そこには顔を真っ赤にした沖田がいた。なんで顔真っ赤にしてるんだヨ、気味悪いアル。

「お、ま…。今名前…」

「あれ、うさぎさんじゃないネ。…夢、見てたアルか?」

「俺が、夢に出てきたの?」

はっきりとしない、ぼんやりとした夢。たしか昼休みに私は沖田と屋上に居て、そしたら沖田が何か言って…。それで気が付いたらそこはモノクロの世界で…うさぎさんがいて、コーヒーを飲んだら……あれ?

「よく…、思い出せないアル」

「チャイナ、体育してたら熱中症でぶっ倒れたんだぜィ?覚えてる?」

「ううん。まったく覚えてないアル。沖田がここまで連れて来てくれたアルか?」

「―――あぁ。ていうか、さっき名前呼んだだろィ。俺の」

「え?…うーん、夢の中で誰かが名前を呼べば戻れるって言ってて…」

「もう一回呼んで?」

まるで何処かの乙女のような表情の沖田。…なんかキモいアル!

トキメクという『ト』の文字も見当たらないような私の心の内をよそに、沖田は期待したような瞳で私を見つめる。まさか、まさかとは思うがコイツ…。

「…私の事が好きアルか?」

「気付くの遅せーよ!それに、ずっと死んだみてーに寝てるからチューしたら起きるんじゃねーかって思ってチューしちまっただろィ」

「ま、マジでか…」

夢の最後で唇になにか触れたような感覚がしたのは、夢じゃない…?本当に沖田がその…チューをしたんだろうか。

「…ど、ドキドキしてきたアル」

「殺し文句でさァ。脈アリだって分かったら、俺ァどんどん攻めさせてもらうぜィ!」

夢の中だと思ってたのに!私の初チュー返せ!!

「まだ好きだって言ってもないし、脈アリだなんて絶対ないアル!!」

「まだでも今からそうならァ。覚悟しな、クソチャイナ」

迫ってくる沖田に、熱中症で倒れた私の体はそれを拒めずにいた。決して沖田を受け入れようなんて思ってないから!!

夢の中と同じ感覚が降ってくるのは、そう思ってから1秒後。





不思議の国の神楽

おわり。
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