春の暖かい風。なんて、よく言えたものだ。

気温の上がり下がりで、例え馬鹿は風邪をひかないとかなんとか言うけど、どんな馬鹿でも風邪をひいてしたいそうな温度変化に、やはりその馬鹿の一部であろうチャイナが風邪をひいた。

俺は学校帰りにそのままチャイナのアパートへ行った。粥を作って、まるで新婚夫婦が「はい。あーんってしてぇ〜」なんて甘い雰囲気を漂わせているかのようだ。

しかし始めに言っておくべきだったのだが、俺たちは断じて「あーんしてぇ〜」や、新婚夫婦のように甘い雰囲気を漂わせるような関係ではない。

それならば何故俺がこんな阿呆チャイナの子守なんぞをしているかって?


それは担任が、誰かチャイナの家にプリントを届けてくれないかと聞いていたHRの時間。

たまたま、本当にたまたま窓側に座っていた俺に向かうように風が吹き、冷たい風が机上のプリントを天井高く舞い上がってしまい、それを取ろうと手を伸ばした瞬間…


「あー、じゃあ沖田。行ってきてくれ。よし、HR終わり!」

「え、ちょっと…」




と言う訳なのだ。


「沖田」

「なに?」

部屋を出て行こうとしたら、チャイナが制服の裾を握ってきた。

なんか可愛い……なんて思ってねぇーよ!


「ま、まだ…。行かないで欲しい、アル」


熱の所為でもあるが、何というか…。


「艶めかしい」

「え?」

「いや、何でもねぇ」

阿呆なチャイナに色気を感じるなんて。

沖田総悟、末代までの恥でさァ。

でも、

「お願いアル」


本当にたまになら。


「独りは、嫌ヨ」


良いかもしれない。



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