「俺、やっぱやーめた」
「は?」
うさぎさんは、いつの間にか門の外へ出て私に向かって言った。
「だって、アンタが居たからおもしろそうだったのにさァ。そんで、嘘の情報を森や町中に流しまくったのに」
「どう言う事アルか?うさぎさん」
「どうしたもこうしたも…。お前は、俺にはめられてたんでィ。志村の姉がどーとか、そんなの最初からなかったんでィ。ただ、俺が面白そうだったから流しただけ」
「ってことは、新八も一緒に騙してたアルか?」
「そーいうことでさァ。この国の住民は、みーんなお前を騙してたってわけ」
「姐御のあの頼みも、みんな?」
「だから、さっきからそう言ってんだろィ」
薄笑いながら、うさぎさんはわたしに向かって指をさす。
「でも、お前はこの世界からでられない。分かるかィ?お前は、大事な事に気付いてないんでィ」
「大事なことアルか?」
「そ。大事なこと」
「と言えば?」
「いつもお前のそばに居て」
うさぎさんは、私のそばに寄り、元の大きさに戻るコーヒーを飲ませた。
「うわっ!もとに戻ったアル!で?いつも私のそばに居て?」
「お前にいつもちょっかいを出すカッコいい奴」
「カッコいい奴…ちょっかい………。ぬお!!アイツアルか!」
「そうそう、アイツでィ」
「高杉!!!!」
ズルッ!
「あ、でもやっぱり高杉は眼帯だし…」
「俺の名前は?」
「…うさぎさん?」
「違う。本当の名前」
「本当の、名前?…あれ、さっきまで呼んでた気がするネ。たしか、お…き…」
「おき?」
「そうだったアル!!沖田ネ!沖田そーご!!」
するとうさぎさんは、ポケットから懐中時計を取り出した。
「その時計、どうしたアルか?」
「これを、首にかけるんでさァ。そんでもって、目を瞑って俺の名前を呼べば、戻れる」
「マジでか。そんだけアルか」
「おう。そんだけでィ」
「じゃあいくアル!!!」
目を瞑って、
名前を呼ぶ。
「そーご…。沖田総悟!!」
唇に柔らかなものを感じた気がした。