日記でございます


発掘しました。

2011/05/26 23:02



頭が痛くて目が覚めた時には、もうかなりの熱があった。
体温計を腕の付け根に挟み、熱を計る。

数分後に、体温計はピピピッと音を鳴らした。


「38.9°もあるネ」


学校を無断で欠席するわけにもいかないし、誰かにメールでもするか、と思い、
慣れないメールを打ち始めた。




* * * *




「よーし、今から出席とるぞー。じゃあまず新八」

「はい」

「近藤」

「はぁ゛ーい」

「土方」

「………はい」

「沖田ー」

「へーい………あ、」



出席確認の途中、沖田は小さく声をあげた。
その声に気付いた銀八は、「どーしたー?」と、気だるげに聞く。


「旦那、そう言えば、チャイナが来てやせんぜ」

「先生な。…神楽が来てない?おーい、誰か神楽知らねぇか?」


そこで、「先生」と、声をあげた者が一人。
志村妙だ。


「神楽ちゃんなら、風邪でお休みですよ。ほら」


志村妙は自身の携帯を取り出し、メールボックスを開いて皆に見せた。


「相当ですね」

「相当だな」


皆が皆、志村妙の携帯のディスプレイを見て、そう言った。


『今日は、熱があるアル(*^▽^*)/ギンチンに休むって言ってて欲しいアリュ』


「あのメール苦手な神楽ちゃんが顔文字を使ってるわ。それに、使い方も間違っ
てる」

「…………誰か神楽の見舞いに行ってやる奴は居るか?」

「どうせなら皆で行きましょうよ。そっちの方が賑やかだわ」

「姉上、どっちかと言うと少人数の方が良いと思うんですが」

「そうかしら…じゃあ―…」




* * * *



放課後、神楽の家の門の前に、3Z生徒が数名集まった。
新八、志村妙、近藤、土方、沖田、山崎。とまぁ、いたって普通のレギュラーメ
ンバー。
しかし、このメンバーが揃っていて、いい事があったことなんて指を三本曲げる
ことができれはたいしたものだ。

この中でも1番の問題児は沖田。
普段から神楽とは犬猿の中で、しかし、沖田は神楽に少なくとも好意は持ってい
るという、素直に自分の気持ちを伝えられない状態。
鈍い神楽は全く気付いていないのだが……。


「初めて神楽ちゃんのお家に来たけど………」

「ずいぶんデケェな。チャイナ娘の家」

「本当ですね。一人暮らしなんでしょうか」

「チャイナさん、弁当も自分で作ってるらしいですよ」

「チャイナさんは、将来良いお嫁さんになるな!!」


大声で笑う近藤と、余りの家の大きさにア然とする、新八、妙、土方、山崎を余
所に、ただ沖田だけは驚いていなかった。


「早く中に入りやしょう。チャイナの部屋、二階の奥にあるんで」

「え、沖田隊長…じゃなかった。沖田さんはチャイナさんの家に来た事あるんで
すか?」

「行くもなにも、飯、此処で食ってるし」

『え?!』

「そんな驚く事ですかィ」

「いや、普通の奴だったら驚くだろ。ましてや、お前らだぞ?」

「いーじゃないか、トシ!総悟もそんな時期なんだ」

「そんな時期ってぇのがどんな時期かどうか分かりやせんけど」

「まぁ、良いじゃない。早く中に入りましょう?」

「はい、姉上」

「あら、新ちゃん居たのね」


新八は妙に、さっきからずっと姉上の側に居たのに…、と複雑な気持ちで居た。



* * * *



「こっちでさァ」


慣れたように(実際は慣れているのだが)先を進む沖田に、一同はぬらりぞろり
と着いて行く。
二階の1番奥の部屋を、妙は二回コンコンとノックをした。
中から小さな声だったが、確かに「どーぞ」と聞こえたので、中に入って行く。


「…あ、姐御にトッシーにゴリラにサドにジミーズ」

『え、僕らって短縮要員?』

「それだけの価値だってことアル……ゴホッ!」

「おい、大丈夫か、チャイナ娘」


土方が心配して神楽の肩に手をかけようとしたときだった。
鋭い殺気が土方を付く。
土方はその殺気の元を冷や汗をかきながら目で追った。


「そ、総悟?」

「土方さん、後は俺がするんで、アンタはどいて下せェ」

「そ、そ、そうだな。俺たちはもう良いよな。命の方が大事だもんな!よよよー
し帰るぞ!志村姉弟に山崎ー…あと、近藤さん」

「ん?どうしてだ、トシ」

「そ、そうですね!神楽ちゃんは、沖田さんが看病してくれるらしいし、僕たち
はお言葉に甘えて帰るとしましょう!ね、姉上に近藤さん!」

「そーですね、じゃあ、沖田さん、神楽ちゃんとよろしく…じゃなかったわ、神
楽ちゃんをよろしくお願いしますね」


ガヤガヤと騒がしい会話を、神楽はベッドの中で聞いていた。すぐ側には沖田の
姿。


「ん…サド?もう皆帰っちゃうアルカ?」

「そうみたいだねィ。用事があるんじゃねえのかィ?」


そうアルカ…。とシュンッとする神楽を、沖田は少し頬を赤らめて見ていた。


「忙しいなら仕方が無いネ。姐御、その他もありがとうアル。また明日ネ」

『俺達はその他あつかいィィィイ?!』

「それじゃ、またね、神楽ちゃん」


そう言って、早くも志村姉弟、近藤土方山崎の五人は、神楽の家から立ち去った


残ったのは、沖田と神楽の二人だけ。


「んぅ…。サド」

「ん?何でィ」


神楽は沖田を傍に呼ぶと、ゆっくりと手を握った。


「へへっ、サドの手冷たくって気持ちいいアル。もうちょっと…こうして良いア
ルカ?」

「あぁ…」


内心、いきなりの事に少々驚いた沖田だったが、普段では感じたことの無い神楽
を感じる事が出来たので、心臓がバクバクだったのだが、ギュッと握り返した。


「サド…、」

「今度はなんでィ」


熱で、余り思考回路が回らないのか、ゆっくりとした口調で神楽が話始めた。


「手が冷たい人って心が暖かくって、広い人アル…だから、サドは心が優しいア
ルナ」


にこり。
そう言って、微笑んだ神楽に、もちろん沖田が黙っているはずもなく、神楽をゆ
っくりと抱き起こした。
急な事に、身じろぐ神楽だったが、優しく抱き起こす沖田に、抵抗とは程遠い抵
抗を止めた。


「チャイ……神楽」

「……サド…?」

「名前」

「?」

「俺の名前、呼べ」


命令形で話す沖田。しかし、神楽は熱のためか、いつもの毒舌がない。
顔を今よりも真っ赤にさせて、小さな声で言った。


「そ…、そーご」

「なァ、神楽。俺が今から言う事…、本気だから…」

「うん」

「ずっと、好きだったんでさァ。お前は気付いてなかったけど」


鈍感な神楽には、カーブ球を投げても駄目だと思った沖田は、他人には絶対にし
ない、いや、他人の女には絶対に伝えない直球で神楽に伝えた。
これならば、神楽も分かってくれるはずだと。

予想通り、神楽は総悟の腕の中で顔を俯かせた。


「……私も、」

「私も?」

「好きだ、ヨ。バカ」


そう言って顔をあげると、タイミングを測ったかのように、神楽に唇付けをした
沖田。
神楽の口内を存分に味わったあと、名残惜しむようにゆっくりと離した。


「はぁ…はぁ…、バカ、風邪移っちゃうアルヨ」

「人に移した方が治りが早くなるって言うだろィ?大丈夫でさァ。もし風邪引い
た時は、あんたに看病してもらうから」

「お前は本物のバカアル…でも、しょうがないから看病してあげる…ヨ」

「ありがてえこった」

「素直に嬉しいって言うヨロシ…ケホッ、コホッ」

「大丈夫かィ?もう寝なせィ。悪化すらァ」

「総悟、私が寝るまで傍に居てネ」

「寝るまでとは言わず起きるまで付き合ってやらァ」

「……………バカ」


そう言うと、神楽はものの数秒で眠りについた。
沖田は神楽の頬に、そっと唇付けし、神楽の寝顔を見ていたのだった。











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