3月4日、朝のこと。
昨日、ウキョウの誕生日を祝うために名前は彼を呼んだ。
その流れで、彼は今日も部屋にいる。
…が。
ジョーカーとおひなさま
「──もう、ウキョウ!」
「や、だって、こんなに綺麗なんだよ?!もうちょっとだけ…!」
「やだ、片付ける!」
拗ねた表情の名前と、その勢いに押されつつも抵抗を試みるウキョウ。
彼がかばう背の後ろには、ひな人形を模した小さな置物がある。
朝一番、置物を片付けようとした名前をウキョウが止めたことから、この言い合いが始まった。
「な、なんで今…!」
名前の怒る理由が分からずになぜ、と続けるウキョウ。
少し言いづらそうに目を逸らす名前だが、少しの間をおいてゆっくり口を開く。
「……私は、お嫁に行きたいの」
「………えっ?」
「ひな人形は3日を過ぎたらすぐ片付けないとお嫁に行き遅れる、って言われてるの!」
だから片付ける!
そう言い切って、ウキョウの横から手を伸ばす名前。
その手を、ウキョウの手が掴んで、抱き寄せるように引く。
「名前…」
「…な、なに?」
意を決したように、ウキョウが口を開く。
「…心配しなくても、君がお嫁に行き遅れることなんかないからね?!
……お、俺が…俺が……!」
「…ウキョウが?」
彼の言おうとしていることが、なんとなく想像できて。
思わず頬が緩んでしまう。
「俺が、君をお嫁さんにするから!」
「うん、ありがと……大好き、ウキョウ」
少しだけ赤く染まった頬でそう言えば、ウキョウも赤く染まって…なんだかあたふたしている。
幸せだなぁ、と。
いつも変わらない彼を、あたたかい体温を、感じて、思った。
結局いつ片付けるのか(笑)
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