だれよりも、君を
「昌浩っ」
今日も元気な声を張り上げて、歩み寄ってくる名前。
朝方、家に帰ると…時々出会う。
そして、そういうときに限って…じい様が居たり、する。
「おはよう、名前」
もう、じい様ってば…若い姿だからって気分いいんだから。
前に「晴明様、そのお姿…かっこいいですね」とか言われてたから、浮かれてるのかもしれないけど…。…。
お、俺だって…負けてないんだからな!
って言うか、じい様…あんな態度、他の人には絶対しないくせに…。…。
「二人とも、お疲れ様でした」
いつも大変ですね、なんて言って…優しく微笑む。
名前、分かってる?
俺は、…だから頑張れるんだよ?
こうやって、家で名前が迎えてくれるから…。
「名前がこうして迎えてくれるから、頑張れるんだよ」
そう言って、じい様が軽く笑う。
そして、だから…と言葉を繋ぐ。
「また、こうして迎えてくれるかい?」
それを聞いて、嬉しそうに頷く名前と、優しく彼女を見つめる晴明。
それを見て、大人しくしていられる昌浩ではなくて…。…。
気付けば、名前の手を掴んで、廊下を進んでいた。
もう、じい様ってば…、と心で呟いていた昌浩は、自分を見つめる祖父の瞳が笑みで細められていたことに気付かなかった。
「ちょ、ちょっと…昌浩?」
「え!?…あ、ご、ごめん…」
自室の前まで来て、不思議そうに名前に表情を伺われる。
そこでやっと我に帰ると、今まで掴んでいた腕を放す。
「どうしたの?突然…」
「え、あ、いや…その…」
じい様が…あんな風に名前に笑いかけるから。
名前が…あんなに綺麗な笑みで返すから。
…なんか、悔しかったんだ。
本当は…あの笑顔、俺に向けてほしくて…。…。
…そんなこと、名前に言えない。
だけど、不安そうな表情のままの名前に何も返さないわけにはいかなくて…。…。
ねぇ、名前…
「…俺…、」
一旦、区切って。
心で一つ、深呼吸。
今度こそ…しっかりと名前を見つめて続ける。
「俺、頑張るから…」
名前を、皆を、護れるように…。
心配かけなくて、済むように…。
それから…、…。
続けたい言葉は、沢山あるけど…やっぱり、一番想うのは。
…だから、
ずっと、俺が護るから…、
「──此処に…俺の傍に、居てくれる…?」
昌浩の言葉に驚いて、目を見開く。
だけど、それは一瞬で…すぐに優しく細められる瞳。
大きく一つ頷いて。
嬉しそうに言葉を紡ぐ。
「私は、いつでもここで、昌浩を待っているから…」
少しでも、助けになれるように。
貴方の…心安らげる場所で在れるように。
…それは、いつまでも変わらない願い。
だから…大丈夫。
君のことを、貴方のことを…、
いつだって…見守っているから───
若晴明様…大好きなんです、出せてよかったv
昌浩が上手い具合に振り回されてくれないかなぁ〜、と思ったらこんな話に(笑)
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