※ヒロインは彰子の姉、彰子に並ぶほどの見鬼の才を持っている設定です。



金魚草を抱えて、



「晴明さま?」

今お通しします、と弾んだ声が迎えてくれる。

「こんにちは、父のご用ですか?」

明るい笑顔が迎えてくれる。

時は平成。
安倍晴明は、青龍を連れて藤原道長の家を訪れていた。


人懐っこい笑顔で晴明を父の待つ客間へ案内すると、接待の準備のために部屋をでていく長女。
すると、それを追うように部屋を出ていく姿があった。

「名前」

普段とは違う、どこか優しげな声。

「青龍、」

嬉しそうにくすりと笑う名前。
後に続くはずの彼の言葉は知っているので、先にそれを遮った。

「いつもありがとう」
「別に」

恥ずかしいのか…素直じゃない彼はぶっきらぼうに返すけど、そんなことも気にならない。
面白そうに笑って、カップを手にとる。
いつの間にかお湯を沸かしている青龍の姿が…なんだかおかしい。

「カップ、貸せ」

やってくれようとしているのが分かったが、さすがに全部やってもらうわけにはいかないと手を伸ばす。

「いいよ、あとは私が…」

二人の分を注いでお盆に乗せると、青龍がそれを持ち上げる。
だけど、それは…

「さすがに、誰かがびっくりするんじゃない?」

彰子は別として、と苦笑する名前。
そんな彼女にすっとお盆を持たれ、一つ溜息を吐く。
仕方なく後を追って歩き出し、部屋のドアを開けたりなんかする。

すると、

「っ、わっ!」
あ、危なかったぁ…

台所を出てすぐ、廊下の端に置かれていたはずの物に足を引っ掛けてバランスを崩す名前。
幸い、大きく転ぶことはなく、その場にとどまった。

「大丈夫か、」

と、少し慌てた声がして。

「大丈夫大丈夫、」
飲み物も何ともないし。

と、どこか間の抜けた声が応える。

話の対象が一致していないことにも気付いていない名前。

すぐに何かにつまづいたり、壁にでこをぶつけたり。
…放っておくとどうなるのか、分からない。

ただ、何故だか。
そんな彼女から、目が離せないでいる。




リオ様へ相互祝いの贈り物です。
ほのぼの&保護者過ぎる!と思いつつ(笑)

※金魚草の花言葉「恋の予感」


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