これは、9月初めの某日のこと。


「名前ー」

呼びかけても返事がない。

「…名前?」

イヤな予感がする。
君は部屋で俺を待ってたはずなのに。
8月は無事に過ぎたはずなのに。

もしかして、なにかあったんじゃ…?


慌てて名前を探せば、小さな背中をさらに丸く小さくしている。

「…名前っ!」

ベッドで丸まる彼女にかけより、様子をうかがう。
すると、眉間に小さく寄せられたシワと苦しそうな表情が目に映る。

「だ、大丈夫!?」

何か悪い病にでもかかってしまった?
何か悪いものでも口にした?
怪我とかしてそうな様子はないし…

あれやこれやと頭の中でパターンを巡らせるけれど、記憶にないことなんて分かるはずがない。
結局思いつくのは悪い結論ばかり。

「…お、俺が消えれば大丈夫かな?!」

「お、落ち着いてっ…!」

ばたばた騒ぎ立てるウキョウ。
小さな名前の声に気付いて意識をそちらへ向けた。

いったた…

お腹に手を当ててウキョウを宥める様は、一見とても異様だ。
ベッドの横で心配そうな表情を浮かべておろおろするウキョウを名前が一喝。

「もうっ!ただの月のモノだから大丈夫!それから!簡単に消えるなんて言わないで!

──約束、忘れたの?」


声もでないとはこのことか。
名前の勢いにおされたウキョウは、最後に大きく首を振るだけだ。

そんなウキョウを見た名前は、いまだ痛みに表情を歪ませながらも満足そうに笑った。


痛み和らぐジョーカー




ウキョウさんを見てると力が抜ける


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