〔金色のコルダ:柚木梓馬〕
言ったが最後
寒い、とお前が言ったのは昼休みのこと。
それから後、お前を待つ今まで、寒さを感じなくさせる方法を考えていた。
おかしいと思うだろう?
自分でも、なんで…って思うくらいだ。
考えても方法が思い浮かばなかったなんてことはない。
ただ、実行してやるつもりはなかったんだ。
お前が走って俺のところに来るのを見るまでは。
「あっ、ゆ、柚木先輩…すみません、お待たせして…っ」
いや、構わないよ…なんて、言ってやらない。
「…あぁ、そうだね」
「うっ、」
そうするとバツの悪そうな表情を浮かべる。
…少し、からかってやりたい気分になった。
幸いなことに、周りに生徒たちは見当たらない。
「…っ!ちょ、柚木先輩っ!!?」
「なんだ?」
「え、いや…こっちの台詞ですよっ!」
焦って頬を染めるお前。
少し、鼓動が早くなるのを感じたけれど、気付かないフリをして。
「寒いんだろ?」
軽く笑って、腕の中のお前を見る。
そうですけど…、と恥ずかしそうにぼやく姿が…、
「…───」
可愛いな、
思っても、声にはならなかった。
…いや、できなかったのか。
きっと、お前が想うより…俺はお前を想ってる。
言ったが最後、お前から絶対に離れられない気がした。
それなら、それでも良いのだと。
心のどこかで思ったことは、今はまだ…隠しておこう───
【まっしぐらの恋のお題 09. 言ったが最後】
恋したくなるお題 配布 様より。
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