〔テニスの王子様:不二周助〕



見上げる花



夏の夜。
空を彩る華麗な花たち。

そして、その花に夢中になる君。
それから、そんな君に夢中な僕。

先から、空を見上げたまま、無邪気に笑う。
そんな君を隣で見ていると、自然に笑みが零れてくる。

だけど…それと同時に。
僕にもその心を、その表情を向けてほしい、って思うんだ。
贅沢なのは、分かってるんだけどね。

だから、ちょっとだけ…君が困る、悪戯を。

「ねぇ、このまま…ウチに戻ろうか」
君の可愛い表情…僕以外に見せるなんて、勿体無いよ。

微笑みを残して、君に向く。
驚いて僕を見上げる君を見て、思ったとおりの反応だなんて思いながら。
それから、困ったように…僕と空を交互に見つめる。

それも、そのはず。
彼女の視線も興味も、今は空輝く花に釘付け。

だけど…それでも、

「先輩が、そうしたいなら…」

そう言って控えめに笑う君が、本当に可愛くて…。…。
何故だろう…?
余裕がなくなっているような気がしたのは…。…。

ふ、と。

見上げていた視線を戻して、僕の表情を伺うと、不思議そうに首を傾げる。

「先輩、…不二先輩?」

一拍。
返答の遅れた僕を心配したのか、もう一度呼びかけて…やっと小さく応えた僕の言葉に頷く。

「人も多くなってきたし…そろそろ、戻りましょ?」

名残惜しそうにしながらも、笑みを向けてくれる君へ。

ごめんね…──

君への独占欲がおこした悪戯と、君のその優しさへ。

だけど…、
心が表れたその表情も。
君をより一層綺麗にする、このときも。

これ以上続けば、もう…。…。
僕には、我慢できそうにないから───





【歩み寄る二人の為のお題 05.困ったように微笑まないで】
恋したくなるお題 配布 様より。




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