〔ヴァンパイア騎士:支葵千里〕



君の微笑みを、



さっきから、目の前に居る彼に、色々と話しかけている。
私は一人、笑顔で。
前に座る千里は、相槌で応えてくれるけど…。…。
笑顔を見せてもらえないのが、なんだか哀しい。

…いつものことだ、って、分かっては…いるけど…──

ただ。
前に笑ってくれたのはいつだっただろう…?
ふと、そう考えてみる。


「あ、段差」

前を歩く彼女にも聞こえただろうか。
…しかし、その声は全く効果を残さず、彼女は大きく声をあげてつまづいた。

「いったぁ〜!」
「…段差、って言ったのに」
「え、嘘!?」
「ホント」

そんなやり取りが続いて、それから…、
不機嫌そうに眉を寄せた私を、千里が面白そうに微笑んで見ていた───


一緒に居ることが幸せ。
話ができることが幸せ。
だけど、やっぱり…、
君が笑ってくれるのが、一番嬉しい。


一瞬、話のとまった私を不思議に思ったのか、首を傾げている千里。

「なんでもないよ」
「…ふーん」

にっこりと笑って返せば、思ったとおり、無表情の応えが返ってくる。


ねぇ、笑って…?
私にとって、それ以上に嬉しいことなんて、ないんだから…──

言葉にしたいとも思うけど、言葉にできない。
だって私は、
普段の君も、時々笑ってくれる君も、大好きだから。

そんな想いと、ささやかな願いを籠めて。
ぎゅっ、と君に抱きつけば、少しだけ…表情が優しくなったのは、気のせい?

ううん、きっと…、
私の想いに対する、千里の応え。

「…千里、好きだよ」

抱きついたまま、甘えるように呟けば、

「なにを今更…当然でしょ、」

そうやって当たり前に受け止めてくれる。


それに、つまらなそうに横を向く仕草も。
ぶっきらぼうな言葉も。
全部、千里なりの応え方だって、分かっているから。


…でも、ね。
私は贅沢だから。

「ねぇ、千里…」
「…なに?」

あちらへ向けた視線を私に戻して、首を傾げるのは、君の癖。
その愛らしい仕草に小さく笑って、また言葉を続ける。

たまに、少しだけでもいいから…

「笑って…?」


なんでもないようなことを、必死に願う。

そんなキミも、凄く可愛いと思えるよ。
だから、つられるようにオレも…、


笑うまでには至らなくても…。
君の目が優しく細まる。
それがしだいに、笑みに変わっていくときを…、
私は、待っているから───





【歩み寄る二人の為のお題 02.最後に笑い合った日を想う】
恋したくなるお題 配布 様より。




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