〔遙かなる時空の中で3:平敦盛〕
最愛の君へ
いつぶりだろうか…ここに帰ってくるのは。
平家の邸を見つめて考える。
戦が始まって、神子と出会って…。
それから、長い時間の中で、色々なことがあったけれど…。…。
いつだって、…忘れることなく、想い続けた。
久しく会えずにいた貴女に…やっと、会えるのだ。
そう思うだけで、こんなにも嬉しさがこみあげてくる。
「敦盛っ!」
突然、邸の方から私を呼ぶ声。
声の主は、顔を見ずとも分かる。
笑顔で駆けてくる愛しい彼女の姿を見つけて、優しく微笑む。
そのままの勢いで飛びついてくるであろう彼女を抱きとめるために、軽く両手を広げてしまうのは、仕方のないこと。
だって…、
本当は、私も駆け出したい気分なのだ…。
そして、早く…貴女に触れたい。
この腕に強く抱きしめて、…──
「敦盛、おかえり」
ぎゅっ、と私に抱きつく愛らしい彼女を抱きしめる。
そうすれば自然と力が籠もってしまう。
それから、彼女の満面の笑みに応えるように、私も笑みが深くなるのを感じた。
「…ただいま」
そう言った私に、淋しかったんだよ、と呟いてから続ける。
「ねぇ、敦盛…」
── 大好き。
少し照れながら、そう囁いた貴女に少し驚いた。
けれど、私の応えなど…決まっている。
「あぁ、私もだ…」
── 愛している。
そう…いつだって、どこに居たって。
私が求めるのは…、
貴女、ただ一人───
【歩み寄る二人の為のお題 07.抱きしめたかったのは】
恋したくなるお題 配布 様より。
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