とある朝のこと。
「「「おはようございます、お嬢様」」」
Bクラス生が交代で担当する朝のお出迎え。
毎度の勢いに若干呆れる里來と全く動じない響。
いつもならそこで終わりなのだけれど、今日は目についた彼の姿に少しばかりご立腹の様子。
下げていた頭を上げ、自分を見つめる彼女と目が合った。
その瞬間に彼の表情が変わったことは言うまでもない。
「…里來、」
ひきつった顔の隼斗に向かって、里來はにっこりと笑顔を向けた。
「おはようございます、隼斗お兄様」
怒っているような、楽しんでいるような表情。
慌てて弁解する隼斗だが、不満気なお姫様には通用しない。
「今日は…皆に同じ挨拶しないとだろ?」
「そう、…で?」
「…は?」
「私が好きじゃないの分かってて言ってる?隼斗」
「…、ごめん」
途端に黙り込む隼斗に、里來がふっと微笑んだ。
「じょーだん、」
「え…?」
「学校の教えに文句言うつもりはないからねぇ」
そう言いながらも見せる表情に違和感を覚える。
『ご主人様とか、お嬢様とかって言い方…すごく遠く感じない?
近くにいる人なら尚更、淋しい言い方だと思うんだけど…』
覚えてる。
最近のことではないけれど、すごく印象強かったから。
だから…今度は、大切な彼女のために。
「…おはよう、里來」
「おはよ、隼斗…お疲れ様」
笑って言えば、彼女が喜ぶことくらい…分かっていた。
さっきより幾分か和らいだ表情で返す彼女を見て。
彼は、よかった…と一息吐いた。
隼斗の声の主、小野Dの誕生日祝い。
小話程度にちょっと思ったことを。
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