やっぱり、苦手だ…。
煌びやかな会場、浮き立つ生徒達。
学内行事とはいえ、失敗を許してくれなさそうな…この雰囲気が、里來は苦手だった。
「そんな仏頂面すんなよなー?」
せっかくこんな可愛いのに、と隣で呟く隼斗。
学園に入学して、行事前の里來のドレスアップは彼にお願いしていた。
それを聞いて、一息、落ち着いてみせる。
伯王のサポートをできるように、そう決めてここに入学したのは自分だ。
しっかりしなくちゃ。
そう、里來は自分に言い聞かせる。
どうしたら里來がノリ気になってくれるだろう。
見るからに頭を悩ませている隼斗を横目で見て、くすりと笑う。
「ありがと、」
しっかりしなきゃ、って思ったのもそうだけど。
隼斗が可愛いって言ってくれたから、ちゃんと可愛くいたいって思ったんだ。
もう、緊張も苦手意識もすっかり隠れていた。
彼の正面にまわって、にこっと笑ってみせる。
「行ってきます」
会場に入れば、執事とは別行動なんて、ちょっとつまらないけど。
そう考えながら、数歩踏み出して、あっ、と振り返る。
「隼斗も、かっこいいよ」
いつもの制服姿。それが、いつもの何倍もかっこよく見えた。
…あまり言ってあげられないけど。
今日は、雰囲気に呑まれた、ってことで。
くるりと身を返して。
会場に入ってしまえば、どこからどう見ても、立派な、自慢のお嬢様だ。
「…言い逃げかよ、」
小さく呟いたその言葉は、誰にも届かず。
まったく。敵わない。
そうして、ふっと笑みを零して、その背中を見送るのだ。
それは、二人がまだ一年生の頃の話。
白雪姫の第一歩
隼斗役の小野Dのソロライ行ってきました。
王子様でした…かっこよかった。の勢いのまま。
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