物語は、月曜の午後から始まる。
「「───伯王っ!!」」
慌ただしく扉を開けて保健室に飛び込んで来たのが二人。
無事か、重傷か…と間もなく続けて、主のハリセンでやっと静まる。
「“幼なじみ”みたいなもの…」
一通りの自己紹介を終えたところで、ゆるりとした声が響いた。
「伯王、大丈夫?」
なんか凄いウワサ聞いたけど…。
相手が無事なのを確認してから、ほっと一息吐く。
それから、新品の制服を着た見慣れない女子生徒の姿を見つけて微笑んだ。
「Lクラス2年、逸美里來です」
よろしくね。
自己紹介とばかりに名乗る里來に、良の驚く声が重なった。
「───里來ちゃん!?」
「…へ?」
良の驚きの意味が掴めないまま瞬く里來に、自分を示すように良が続ける。
「ほら!小さい頃よく遊んだでしょ?」
「小さい頃、よく遊んだ…」
「そう!良だよ、氷村良」
「氷村、良……良ちゃん!?」
一瞬の沈黙の後。
驚いた里來の声が響いて、部屋が戸惑いに包まれる。
「…どうしてここに?」
沈黙を嫌う里來が疑問を零す。
「えっと…今日からここの1年に編入してきたの、それで…」
先までのことを説明しようとする良を、伯王が止めた。
「いいから寝てろ、下がる熱も下がらないだろ」
「熱があるの!?ごめん、大丈夫?」
慌てて気遣う里來に、大丈夫、と返して続ける。
「…熱かぁ…」
おかーさんの特製ジュースがあれば、すぐ下がるのに…
それを発端に、伯王がテキパキとジュースを作った。
美味しい、と笑った良ちゃんが記憶を甦らせる。
それと同時に、伯王が良ちゃんに向ける表情が優しいのに気が付いた。
へぇ…と感心していたら良ちゃんの声がして、反射的にそちらを向いた。
「あ!ねぇ、里來ちゃんはなんでここに?伯王たちと知り合いなの?」
質問攻めの如く話し始める良。
里來は一瞬考えるそぶりを見せたが、すぐにニッコリ笑って答えた。
「ん?…ああ、伯王は私の従兄弟だから」
その二人も小さい頃から知ってる。
「そうなんだぁ、」
そう呟いて、嬉しそうに笑う。
「…どうしたの?」
「だって、久しぶりに里來ちゃんに会えて嬉しいんだもん」
それに、色々私を助けてくれた伯王が里來ちゃんの従兄弟なんて、すごい偶然。
「──そうだね、」
自然と笑みが零れる。
また一段と、学園生活が楽しくなる予感がした。
シンデレラがやってきた
ちょっとだけ原作冒頭沿い。
里來ちゃんと良ちゃんの再会。
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