「…っ」

季節の変わり目、夕方のテニスコート。
朝は暑いくらいだった風が冷たく変わる。
肌寒い感覚に思わず腕を抱くと、肩に温かさが触れた。

「寒いなら上着羽織っとかないと」
「ん?うーん…」

実は、今日上着を持ってきてないなんて…この様子じゃ、言わなくても分かってるんだろうなぁ。

かけられたジャージを掴んで、温まりながら隣を少し見上げる。

「…ありがと」
「どういたしまして」

ニコニコしてる周助は何考えてるのか、よく分からない。

「…寒いでしょ?」
「僕は練習中だから」

こんな風にさらりとかわして…私の考えなんか、知らないみたいに。

「でも、風邪ひいたら大変…」
「心配してくれるの?」

嬉しそうに笑って、それじゃぁ、と続けると…。

「えぇ…っ!!?」
「どうしたの?」
「それはこっちの台詞!何やってんの!?」
「何って…、」

抱きしめてる。
と、言葉にするのは簡単だけど、声にされるのは恥ずかしい。

「あーー!言わなくていいから早く放して!」
それに、ここは学校だってばっ!

素直に放してくれた周助。
面白そうに笑って、私を見ている。

「…な、なに?」
「いや、別に」
「…うそ、」
「テレてる君も可愛いなぁ、って思っただけだよ」
「な!なにを…!」

墓穴掘った…!

そう気付いた彼女が、悔しさから不二に険しい目を向ける。
それをかわすように笑顔のままだった不二に、休憩終了の声が届く。
少し残念そうにして、彼女に向いた。

「寒かったら、ちゃんと室内にいなよ」
風邪なんかひかれたら、心配で練習にならないからね。

それだけ言って、また練習に戻る。
その後姿に、りょーかい、とだけ呟いて、また暫く彼らの練習を眺めることにした。



寒がりの君に、


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