休みの日だって言うのに、毎日部活。
別に私が練習するわけではないから、来る必要もここで練習が終わるのを待つ必要もないんだけど…。
彼が口にしたほんの小さな言葉が、どうしても胸に残って消えなかった。

『やっぱり、特別な日には君と一緒に居たいな…って思うんだけどね…』

珍しく、困ったように眉を寄せるから…。
日曜の夕方、風も冷たいこんな時間に…私はここに居る。



君のお願い



少し強い風が吹いて、一瞬身震いする。

練習を終えたらしい挨拶が聞こえて、すぐ。
私の名前を呼ぶ彼の声がして、こちらにくるのが見えた。

「…どうしたの?」

不思議そうに、何かあったのかと問う様子を見ていると、本当に検討がつかないのかと言ってしまいたくなる。
けれど、さすがにそれでは悪いと思い直して要件を伝える。

「誕生日の、お祝いに」

その声が思ったよりぶっきらぼうなことに少し反省しつつ、目を合わせづらくて下方に逸らす。

本気で驚いていた様子の彼が、ふっと嬉しそうに微笑んだ。

「僕のお願い、叶えてくれたんだ?」

的を射た言葉に、何も言えずに居ると声が続いた。

「わざわざ来てくれるなんて思わなかった、」

まぁ、普段の態度から考えればそうだろうけど…。
たまには、さ…私だって、これくらい…。…。

「…感謝してよね、」

あぁ、ここまできても出てくる言葉は素直じゃない。

耳まで赤くなっているのは、寒さの所為だけじゃないはずなのに。

そんな君も好きなんだから、僕も相当なものだよね。

「うん、ありがとう」

この瞬間が、なにより幸せだと思う。



帰りの支度をしてくるからもう少し待ってて、とだけ言い置いて部室にかけていく彼。
その背中に向かって…小さく、本当に小さな呟きを零す。

「おめでと、…だいすき」

聞こえたのかは知れない。
だけど、帰り支度を終えて戻ってきた彼は、すごく幸せそうに笑っていた。
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