「露海、おはよう」
「…おはよー」

相変わらずな笑顔の周助に対して、寒さに加えて眠たそうな様子で応える露海。
日が日なだけにクラスメイトはどこか楽しそうにしているが、露海にそんな様子は見られない。

「ねぇ、露海…」

…やっぱり、と思った。

声を出した周助は、どこか伺うような目を向けてくる。
言葉の先は、多分、私の思うとおり。
だから、ポケットに手をのばして目当のものを見つけると、言葉を遮るように差し出した。

「…どーぞ」

「え?」

差し出したチョコを見て、不思議そうな声を出す周助。

それは、何に対してだろう…。
心当たりを削って答えを探す。

「…くれるんだ、ありがとう」

にっこり笑った周助に、心の中で呟く。

…始めからそのつもりだったくせに。


「でも、さ…」
毎年色々くれるから今年はどうかな、って考えてもみたけど…。

少し切って、クスッと笑ったのが分かった。

「まさかこれだなんて、思いもしなかったな」
「…そーですか」

私だって、色々考えたんだよ…。

でも、結局は小さなチョコを一つだけ。
分かってるくせに、なんでこれに?なんてわざとらしく聞いてくるのが憎らしい。

『だって、周助は沢山もらうだろうから…沢山ある中でも、ちゃんと気付いてもらえるように───』

そんな心は隠して、さぁね、とだけ呟いて窓の外に目を向ける。
そうしたら、私の頭をふわりと周助の手が撫でる。

「まったく…素直じゃないんだから」

言いながら、なんだか嬉しそうな周助。
その理由は分かってるから、あえて言いはしないけど。


ふ、と。
椅子に座ったままの私の高さに揃えるようにした周助が、あ、でも…、と思い付いたように言葉を続ける。

「露海が食べさせてくれたら、もっと嬉しいかな」
「っ!ば、馬鹿じゃないの…!!?」
「クスッ、冗談だよ」

思わず振り向いた私の頬に、いつの間にか周助が唇を寄せて…触れた。

「!!?…っ、な、なに…!!!」

「なにって…露海が可愛いから」
ちょっと、触れたくなっただけだよ。

優しい微笑みとともに告げて、

「今日は、これで我慢するよ」

あんまりだと、怒られちゃうしね。

と、言ってのけた。

「なっ!もう、うるさいっ!!!」
だいたい、我慢ってなによ!

そんな私の態度も、照れ隠しだって分かっていて、微笑む。

少し大きな声を出したからか、落ち着くように一つ息を吐いて…そして、思う。


…でも、よかった。
喜んでもらえ、た…よね?


そんな私の心を知ってか知らずか、軽い口調で周助が言う。

「クスッ、月末が楽しみだな」

期待してていい?───

より近くで囁かれた言葉に、うまく反応できない。
ようやく返せたのは、気持ちを反するような短い言葉。

「…しらない、」

そんなこと言ったって、頭のなかはそれだけでいっぱいのくせに。

月末…周助の誕生日まで、あと半月。
それまで、考える日が続くんだろう。

…でも、

それもいいかな、って思う程なんだから…私も相当バカなのかな、なんて小さく笑う。

…でも。

たまには…そんな私も、悪くないでしょ?

…ね、周助───



予測不能のプレゼント



チロ●チョコ!しかも1個(笑)

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