何もない、広いのか狭いのかも曖昧な、不思議な空間。
青年が二人と少年が一人。と、もう一人。
01
「本当に、いいのかい?」
青年の、静かな声が問いかける。
「……あぁ、」
少しの間と、息を吐く音に続いて、もう一人の青年が応える。
その表情は、嬉しそうで、切なそうで、泣き出しそうで。
「…俺の望みは、ちゃんと叶ったから」
8月25日。
運命の日を越えて、それなのに、マイは。
「彼女が生きている、それだけで…」
腕の中で眠るマイに視線を落とす。
…これ以上は、望んじゃいけない。
そんな青年の心を知っているかのように、もう一人の青年が告げる。
「…また、頑張ってね」
この世界の彼女は。
君の世界の彼女のように、君の想いに応えることはなかったけれど。
でも。
この世界の彼女には。
これから、ゆっくり想いを伝える時間がある。
彼女が生きてさえいれば、また。
君に笑いかけることも、あるかもしれないから。
「………ありがとう、」
やさしい嘘のオブラート
そして、青年と少年は。
『罰』というものを受けるために、離れていった。
【Fortune Fate:君がいる日々10題】
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