「んー!」
大きく背伸びをして体を起こす。
カーテンの向こうから見える光は、今日も随分機嫌が良さそうだ。
大きな布団にくるまって眠るのにも少しずつ慣れてきた。
隣で眠るニール様…もとい。兄は、まだ幸せそうに眠っている。
夢のような、新しい日々が始まって。
毎日が、なにもかもが、きらきらとして目に映る。
「今日もいい天気だよ!起きて、」
カーテンを引っ張りながら、固まった。
今、誰を、呼ぼうとした?
『マイ』
そう動きかけた口を一度閉じて、
『ニール様』
と、言い直す。
時々。
勘違いしそうになる。
部屋のつくりも、朝陽の入り方も、ベッドの位置まで一緒のあの部屋と。
一つ下の階で眠る、マイと。
望んじゃいけないんだ、って。
ちゃんと言い聞かせているのに。
それなのに、時々。
あの笑顔が、ひどく懐かしくて。
恋しい。
03
『あぁっ!今日バイトの日だよ!起きて、マイ!』
『今日もいい天気だね!よく眠れた?』
『マイ、おはよう』
「ん…おはよ、お」
あ、れ…?
時々、起きがけの耳に声が響く。
それは、夢なのか、私の気のせいなのか分からない。
寝ぼけ眼で起き上がればやっぱり。
ここは、私の部屋で。
他の誰も、いるはずがない。
ひとりで目覚める朝
【Fortune Fate:サメテユク十題】
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