今日も晴天、苗の世話にはもってこいの日だ。
近場の苗に水をやり、次へと動きかけたその時。

「あっ!カリガネ!ストップストーップ!!」

大きな声で静止される。
その場に止まって声に振り向けば、大きな養土を抱えて私の横を抜けていく撫子。

とても広いとは言い難い店内通路を重い土を抱えて歩く彼女は、とても活き活きとしていた。


それから少しして、水遣りを終えようかという頃。

「あっ!カリガネ、ストップ!」

本日2度目の静止。
いったい何があるのかと考えていると、撫子が笑顔で言う。

「この花はね、水をあげすぎちゃダメなんだって」

まだ土の表面が湿っている、だから今水は必要ない、と。

「…助かった、ありがとう」

もしかしたら、根を腐らせてしまったかもしれない。

まだ知識の足りない私に優しく教えてくれた撫子に、素直に礼を言う。
彼女は笑ってどういたしまして、とだけ言うと、また作業に戻って行った。


仕事中の撫子は、とても頼りになる。
小さい頃から花が好きで、手伝いをしていたと聞く。
それ故に蓄えられた知識に助けられることは多い。

そして、とても──

そこまで考えて、一つ息を吐く。

……いつもああなら、いいものを。

普段の元気が良すぎるくらいの姿を浮かべる。
仕事中の姿を、見る。

ただ、あの元気さがなくなったら……それはそれで、撫子ではないのかもしれない。
それだけ思って、私も次の作業に取り掛かった。



尊敬




たまにはちゃんと働いてる話(笑)

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テーマ「人外ファンタジー」
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