「そーいえば、撫子が好きな人ってどんな人なの?」

女子高生の昼休み。
会話と言えば、昨日見たテレビの話か、恋バナか。
だいたいどちらかと決まっている。

興味津々、そんな表情で身を乗り出す友人に、彼の姿を思い出して告げる。

「…言葉は少ないけど優しくて、お花が大好きな人」

撫子が親戚の花屋で働いていることは、皆知っている。
そして、誰かが思いついたように言った。

「あっ、もしかして!あのバイトの人?」

背高くてかっこいいよね、なんて、簡単に言って。

「えっ、年上?何歳?」

ますます興味をもった友人に質問を重ねられ、渋々返す。
大丈夫、なにも悪いことはないんだから。

「今、31」

えっ?それって…
ざわつく友人たちの声。

「そんなに年上?もっと近い人にしたら?」
撫子のこと可愛いって言ってる先輩、結構いるんだよ?

ほら、そうやって14歳の年の差をムリだよ、って言うんだ。
ちょっとかっこいいから、好きだと思ってる、って。
そんな気持ちなら、こんなに長い間頑張ったりしない。

「──いいよ。好きな人くらい、自分で判断できる」

年上すぎると子供としか見てもらえない?
遊ばれて、つらい思いをするだけ?

……カリガネのこと、何も知らないくせに。よく言うよ。

ちょうどよく鳴った予鈴に合わせて。
心配そうな視線を私に向けてくる友人たちから逃げるように席に着いた。


今日も、帰りは花屋に寄る予定だった。
確か、カリガネもバイトで入っている。

昼の会話を思い出して、少し憂鬱になる。

気にしてないわけじゃない。
カリガネと年が離れてることくらいわかってる。
カリガネが自分を子供だと思ってることくらい、分かってる。

…それでも、好きなんだから。どうしようもない。

彼にいい人ができるまでは、好きでいたい。


「……どうした」

花屋に着くと、店にはカリガネ一人で。
沈んだ様子の私を気にして、小さく訪ねてくれた。

黙っていたんじゃ、仕方ない。

「──好き、カリガネ」

振り絞った言葉は月並みで、聞き飽きたとばかりにカリガネが息を吐く。

「…知っている、」
「本気だから!気の迷いとか、憧れとかいうんじゃなくて…本気で好き。」

だから、

「………いつか、私を、好きになってほしい」

告白。
こんな風に伝えたことはなかったから、彼は少し驚いているみたいだ。

…けれど。
いつもみたいに、冗談言うな、って一蹴しない。
私の気持ち、少しは分かってもらえたのかな?

子供なりに。
こんなに、真剣なんだよ、って。



愛の告白

「…………分かったから、着替えてこい」
「…う、うん」

その後しばらく、気恥ずかしくて彼の目を見れなかった。




好きです、大人と子供。お兄ちゃんと妹。

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