「…一条先輩」

控えめに尋ねる咲姫。
どうしたの、と問えば、申し訳なさそうにお願いを告げる。

「ここが、よく分からなくて…」
教えてほしいんだけど…いい?

広げられた教科書は、数日後のテストの為か要点が目立つようになっていた。
一条は軽く微笑むと、頷いて返した。

「僕でよければ、喜んで」

そうすれば、君は嬉しそうに笑って、頷いて。
だから、僕まで嬉しくなる。



学生苦難の、前と後



先輩!
「今回のテスト、いつもより点数よかったよ!」

満面の笑みを浮かべて話してくれる姿は、ずっと変わらなく可愛いと思う。

「ありがとうございました!」
「どういたしまして」

一つ頭を下げて、僕に向く。
君の笑顔が僕まで笑顔にしてくれてるんだって、気付いていなくてもいい。
それでも、僕にできることなら何でもしてあげたい、って思うのは、そうやって君が笑ってくれるからかもしれない。

「ねぇ、お礼させて?」
なにがいいかな?

だから本当は、お礼なんていらないんだよ。
だけど、咲姫ってば…さっきから可愛いことばかり言うんだから。

──少しだけ、

「…それじゃぁ、」

人差し指を頬に当てて、にっこり笑う。
幼い頃、別れを惜しむように頬に口付けた…そのときに見た仕草。
見覚えのあるそれに、咲姫は驚いたような声をあげた。

「えっ、それは、その…」

今になっては、照れてしまって動揺を隠すこともできない。
慌てふためく咲姫に、拓麻が小さく笑う。

「冗談だよ、」

それを聞いて気が抜けたらしい君の頬に軽く口付けて、抱きしめる。
驚いて固まってしまった咲姫から応えはないけれど。

「…本当、可愛い」

しばらく、ここままで居たいと思った。
君に触れていられる、この距離が…思うよりずっと、心地良いから。


季節変わりゆく日の午後のこと。




なんか色々すみませんでした!←

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