「エアコン壊れちゃった。」
あっさりと言い放つその顔に思わずため息が漏れる。
「で?」
「いやだからエアコン」
「ちげえ!!それで何でこんな夜中に俺を呼んだのか聞いてんだよ!俺は修理屋じゃねえんだよ!」
「バカだなあ今修理屋呼んだってすぐに直るわけないじゃない。」
「そこじゃねえよ!」
叫んで、それからため息をもう1つ。
このバカを真面目に相手するだけ無駄なのか、そうか。
「帰る。」
「え、帰るなよ。」
「…俺にエアコンは直せねえよ。」
「そんなことシズちゃんに期待してるわけないだろ。」
「わかってんなら」
「だから一緒に寝ようよ。」
まばたき数回。
臨也の放った小さな爆弾が耳から脳に到達。
理解。
「は?」
「聞こえなかったの?寒いから一緒に寝よう、って言ったの。」
「言ったな。」
「言ったね。」
まあ恥ずかしながら俺と臨也は所謂恋人というもので。
そういう意味ではとくに断る理由もない。
そして確かに部屋は寒い。我が家と違いしっかりとしたこの部屋でも、いや、むしろ大きな窓があるこの部屋だからこそだろうか、まさに凍えてしまいそう、という表現が似合う体感温度だった。
…寒いから、しょうがないな。
「…ちっ。おい、ベッド行くぞ。」
「…ん。」
そう、寒いからしょうがない。
だから俺は自分の家に連れて行って暖房をきかせて別々に寝るという選択肢も、最近メンテナンスが入ったばっかりのエアコンが本当は壊れている筈がないということも全部見なかったふりをして、こいつの冷たい手を握るのだ。
嘘吐きたちの夜更け
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チャット投下物。