※限りなく静+臨な静→臨
※バッドエンドな感じ
※微暴力





首を掴む腕からギリギリと音がしそうだ。
いや、むしろ音がしそうなのはその腕の力を一心に受ける俺の首か。

シズちゃんの無駄に大きい手に首を掴まれ必死に抵抗している身体をどこか遠くで見つめる俺の意識が思う。
あれ、これ幽体離脱?結構まずい?…いや、あくまで遠くからというのは比喩で俺の意識は俺の身体の中にしっかり収まっていて決して飛び出している訳ではないので違う。どちらかといったら他人事のように、が正しいのかもしれない。

「はっ…はあっ…ぐっ、」
「チッ…しぶてえな、早く死ねよ。」
「…あ…がっ…、っ!」

まあどちらにせよ首を絞められてる人間の思考としては正しくない。

シズちゃんが首を掴んだまま腕を上にあげたせいで身長差のせいでもともと浮き気味だった足は完全に地上と離れ離れになっていた。くらくらする。酸素が足りない。無意味に口がパクパクと開閉しているのを感じた。

あと10秒くらいで色々と取り返しがつかなくなるんじゃないかとぼんやりする頭で身体の抵抗を眺めながらのんびりかんがえ、間延びした脳内ボイスでカウントダウンをしてみる。

じゅーう

きゅーう

はーち

なーな

ろーく

ごー

よーん

さーん

にー

いーち

くたり、と俺の身体が抵抗を無くす。
それをみた静雄の表情が歪む。


ぜー…


どさり。


「―っ!ひっ、はっぐあ、あ、げほっ、げほげほっ!」
「――――。」
「はっ、は、はー、あ、げほっ。」
「…チッ。」

瞬間、空中で俺の身体を支える腕が無責任にも職務放棄をしたおかげで俺は重力に引かれるままに地面に落下。押し寄せてきた路地裏の新鮮とは言い難いものの充分に酸素を含んだ空気に咽せることになった。

「…ふっ、ははっ、また殺せなかったね。」
「…黙れ。」
「馬鹿だねえ。君に俺が殺せるわけがないって何回いったら、」
「うるせえ!」

ゴキン、ともドカン、とも取れる音と共に顔の横のコンクリートが目の前の男によって砕け散る。

「黙れっていってんだろ!」
「…ほら、まただ。」
「ああ?」

砕け散ったのは顔の横のコンクリート。
決して俺の頭蓋および脳みそではない。

「やっぱり君は俺を殺せない。」

けらけらとわざとシズちゃんの逆鱗に触れるようにシズちゃんの嫌いな笑い方で存分に笑ってやる。

俺は先程の状況からお察しの通り満身創痍だ。
これだけシズちゃんを煽っておいて逃げるどころか指先ひとつ動かせないのが現状。

でも、生きている。

シズちゃんが殺そうと思えば今すぐ先程地面を砕いたように俺の頭蓋骨と脳みそをぐちゃぐちゃに砕けるのに、だ。

結局悔しそうに俺を睨むシズちゃんは人間でありたいのだ。
人間は嫌いだからといってすぐに他人を殺したりしない。
したとしたらそれは一般的な人間ではなく、どこかおかしい人間だ。
平和島静雄はそんな考えにでも縛られているんだろう。

ああ嗚呼なんとくだらない。
この化け物はたかがそんなくだらない理由で世界一憎い折原臨也を殺せないのだ。
化け物のシズちゃんといえども人間の平和島静雄には勝てないのだ。


俺はそれに気がついたとき、シズちゃんから逃げるのをやめた。
殺されないなら愛しいニンゲンの暴力ぐらい甘んじて受けてやろうではないか。

静雄が俺の首の絞め痕を見てまた顔を歪める。
あーあ、くだらない。

「そういう静雄くんの人間みたいなとこは反吐がでそうなくらい愛してるよ!」

良かったね、君は立派な愚かで弱いとても惨めなニンゲンだ。
にっこりと笑ってやるとシズちゃんは絶望したような顔をしたが俺にはもうその表情の意味を探る意味なんてさらさらなかった。


人間の証明
さよなら俺の化け物。
大嫌いだったよ。


〈End〉
―――――
静雄が人間の良識に縛られてる限り臨也は殺せないんじゃないかなと。
そして臨也はそれに気がついたらもう静雄を人間扱いし始めるんじゃないかなと。
というかこれシズイザ扱いでいいのか?
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