俺の朝は、いつも2人分の食事を作ることから始まる。


ご飯、味噌汁、焼き魚。
俺としては朝は軽くトーストくらいで済ませたいところだがやつに言わせれば俺好みの朝食では「食った気がしない」んだそうだ。だから朝食は和食である。あんなやつのわがままきいてあげるとか俺まじできた嫁だよね。


「あ、時間。」

魚が程よく焼け、朝食の香りが漂い始めたころ、俺は時計を見て呟いた。
と、同時にどすどすと2階の寝室から降りてくるしとやかとは言い難い足音。

「おはようシズちゃん。今起こしに行こうと思ったとこだったんだけど。」
「あー…、なんか飯の匂いしたから目、覚めた。」
「…よくあんだけ離れたとこで匂いわかるね、流石動物。まあ、もうほとんど出来てるし食べようか。」

さり気なく失礼な言葉を織り交ぜるが寝起きがあまりよろしくないシズちゃんは気付かない。
くあっと大口を開けて欠伸をし、寝ぼけ眼。あ、髪の毛に寝癖が。




「…うまかった。」
「そう、良かった。」

朝食を食べ終わるころにはシズちゃんはすっかり覚醒する。相変わらず髪の毛はボサボサだけど、それも櫛を通せばすぐ整う。あとはバーテン服に袖を通せばいつもの平和島静雄の完成。…蝶ネクタイの位置ちょっとおかしいけど。

「曲がってる。」
「お、ああ、あー…、さんきゅ。」

…目逸らすな、頬染めんな。そういう反応されるとこっちが恥ずかしいんだけど。確かにちょっと今のはテンプレだったけどさ。

「…ちょっと、ぼーっとしないでくれる?そろそろ時間だけどいいの?」
「!、やべ!」

慌てて玄関に向かうシズちゃんに苦笑が漏れる。相変わらず落ち着きが無いんだから。

後を追って玄関に向かうと靴を履いたシズちゃんが今まさに立ち上がったところだった。
そのまま駆け出そうとして一時停止。振り返り、

「いってくる。」
「いってらっしゃい。」

前に向き直り、慌てて出て行く。
軽く手を振り見送る俺。

シズちゃんはでていくときと帰りの挨拶を欠かさない。
出て行くときには「いってきます」かえってくるときには「ただいま」と必ず言う。
噛み締めるみたいに。
ここが俺の家だと、いや「俺たちの」家だと確認するみたいに。


「…さて、俺も片付けするかな。」

小さく伸び。
これから俺はいつも通り2人分食器を片付けて、2人分の洗濯物をたたみ、2人分の夕飯のメニューに頭を悩ませてみたりするのだ。
いつも通りの。いつも通りになった俺の1日が始まるのだ。

左手の薬指の指輪がキラリと光った気がした。



日常がはじまる


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