※幽(と静雄)の話
※中学時代捏造
※モブ注意






「こらまてお前!」
「?」

昇降口で肩を掴まれる。
目の前にはいかにもな体育会系の教師。

「お前その髪は何だ!校則で男子生徒の髪は―…」

わーわーとまくしたてるその内容からはどうやら僕の髪の長さが気に食わなかったらしいことが読み取れた。そういえば最近は散髪に行っていなかった気がする。

「聞いてるのか!なんだその目は!」
「すいません。」

教師の説教は更にヒートアップし始める。
決して反抗的に見える目をしたわけでは無いのだが無表情な自分はときにそういう風に見え相手を煽ってしまうらしい。

「担任に報告させてもらう!名前は!?」
「平和島幽です。」

平和島、その一言でヒートアップしていた彼は瞬時に青ざめた。唇が戦慄き視線が宙を泳ぐ。

「平和島…1年のか?」
「はい。」
「あの…あれの…、ああそうか…今回はいいにしてやるからさっさと行け。」

そういった彼はこちらを見ることも僕の礼に耳を傾けることもせずそそくさと昇降口に戻っていく。

(…また、か。)

平和島、幽。
平和島、平和島、平和島。
平和島、静雄。

僕の家は特別金持ちなわけでも何でもない。だから兄さんと同じように僕も小学校を卒業したあと地元の公立中学に通うことになった。
兄さんは僕が入学する前に卒業し、来神高校という高校に行ったらしい。
そうしてすれ違いに入学した僕を待っていたのは、腫れ物をさわるような教師の扱いだった。

平和島幽。
平和島、平和島、平和島。
平和島静雄の、弟。
弟。

(平和島…だからなんなんだ。)

兄さんは確かに普通の人間としては少しおかしい力をもっている。だけどそんな力を持った兄さんは普通の人間だ。
怒って、人を傷つけて、傷つけたことに傷つく、至って普通の人間だ。

彼らにとってそんな兄さんは、平和島静雄はそんなに恐ろしいものだったのだろうか?なんの力も持たない平和島幽を、平和島静雄の弟として扱い、気を遣わなければならないほど?
兄さんが何をした?何をしたっていうんだ?兄さんはただでさえハンデをつけられているのに、それを抑えようと努力してるじゃないか。なのに彼らは、結果だけ見て兄さんを化け物腫れ物除け者扱い。

自分ですら何かを感じるこの扱い。兄さんは、どう感じたのだろうか。

自分の表情は全く変わらない。
だが顔には出ないその感情の正体はおそらく、

ああ、

(「イライラする。」)

苛立ちをぶつけるように壁を叩いてみる。

ごん。

鈍い音が響くも決して壁に穴があくようなことはなく、僕は兄さんを思ってもう一度壁に拳を叩きつけた。

狐の威を借る狐
さあその目を開いてよく見るんだ臆病者たち!そこにいるのは本当に虎か?


〈End〉
―――――
幽の口調が掴めない…
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